シンガポールで開催予定のRNA2023 (https://www2.rnasociety.org/)のアブストラクトの投稿は終了していますが、その後素晴らしいデーターが出た!やっぱりポスターでいいから出したい!という方がおられましたら、今週中に、当学会の問い合わせフォーム (このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。) より至急ご連絡ください。

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日本RNA学会 会長

 第13期会長を拝命しました大阪大学の廣瀬です。私はこれまで30年もの間、RNAの基礎研究を行ってきました。RNA研究の魅力は、その柔軟性と多様性にあり、全く予期せぬ基盤的機能の発見が期待できることだと思います。これまでにも一つのRNA機能の発見が、分子生物学の世界を大きく変えてしまう力を発揮したことが幾度となくありました。

 1960年代後半、分子生物学のセントラルドグマでのRNAの働きが理解されると、当時の先導的な研究者たちは、もはや分子生物学には本質的な問題は残されていないと考えました。しかし今になって見れば、その後の展開こそがまさにRNA研究の真骨頂であったと思います。例えば、真核生物で予想もしないイントロンの存在が明らかになり、RNAプロセシングという新たなRNA研究が花開きました。一方で、常識を覆すRNA酵素の発見から、原始地球での生命の起源に関する有力な説が提唱されました。さらにRNAの持つポテンシャルを人工的に引き出そうとするRNA工学研究が発展していきました。20世紀末には、小さなRNA機能の大きなインパクトから、制御因子としてのRNAの役割がクローズアップされました。そして21世紀のポストゲノム時代には、正体不明な膨大な数のノンコーディングRNAの存在が示され、それらは未だに大部分が手付かずの状態で残されています。このようにRNAは、分子生物学の黎明期から今日に至るまで、それぞれの時代に即した形に姿を変えて、常に分子生物学の最先端分野であり続けています。または、RNAの新機能発見によって、分子生物学の方向性が決定されてきたと言えるかもしれません。

 こうした時代の流れの中で、我が国では日本RNA学会初代会長の志村令郎名誉会員によるRNase P RNAの研究、西村邁名誉会員によるtRNA修飾の研究、古市泰宏名誉会員によるキャップ構造の発見といった分子生物学の基盤を支える数々の重要な研究がなされ、世界でも独自のプレゼンスを示してきました。こうした研究は、その後、後進研究者に引き継がれ、さらに独自の発展を加えて大きく花ひらいているものもあります。また世界を先導する新しいRNA研究も我が国から発信されています。日本RNA学会は、これからもこうした優れた研究を後押ししていきたいと思います。RNA研究は、昔から日の当たるメインストリートを厭う裏街道に集う人々が、アウトローな独特のこだわりを持って取り組んでいると言われてきました。そんな中で、RNAに対する愛着、RNAを美しいと感じる感性は、日本RNA学会員の多くが共有できるものでしょう。こうした中から、欧米の華々しい研究とは一味違うフレーバーのRNA研究が知らぬ間に生み出されてきているのではないかと思います。そうした研究をぜひ強く醸し出せる学会であってほしいと願います。昨今、学会の国際化が叫ばれていますが、国際化は海外の研究を取り入れるだけでなく、日本の研究フレーバーを海外に向けて強く発信する場でなくてはなりません。

 一方で、RNAは現在、新たな創薬の手法や標的として、確固たる地位を築きつつあります。古市名誉会員が発見したキャップ構造が、mRNAワクチンの必須要素として取り込まれ世界の人々を救済する一翼を担ったことは、RNAの基盤研究の重要性を改めて認識する貴重な機会であったと思います。RNAを創薬に結びつける確固たる潮流が形成されている中で、核酸創薬の研究者からよく聞かれるのは、「RNA学会は難しすぎる、厳格すぎる、参加するのが怖い」といったコメントです。上述したような日本RNA学会が世界に向けて発信する高品質な基礎研究を重んじる気風は、時に周囲の分野の研究者が本学会を敬遠する要因になっている場合もあるようです。日本RNA学会としては、こうしたご意見も重く受け止め、本学会の最先端研究成果をいかに周辺分野の研究者各位にわかりやすく発信していくかを真剣に検討したいと思っています。そしてこうした取り組みが、RNAの基盤知見を画期的な応用技術開発へとつなぐ第二、第三のキャップ構造を生み出すことになると思います。

 最後になりましたが、日本RNA学会は、男女を問わない多くの若い研究者が肩肘張らずに活躍できる場であることを願っています。先日の東京年会の席上で、特別講演者のKatalin Kariko博士と古市名誉会員の名前を冠したFuruichi-Kariko賞の創設が決定しました。この賞は、これからの我が国のRNA研究を先導してくれる若手研究者を対象とした賞になる予定です。これまでもそうであったように、若い研究者の自由で野心的な発想が研究分野に活力を与えます。日本のRNA研究が世界の誰も考えたことのないような意外性と先見性を兼ね備えた独自のフレーバーを放ちながら発展してくれることを強く願っています。

令和6年7月22日

日本RNA学会会長

廣瀬 哲郎