訃報

2019年10月03日

英国MRC LMBの長井潔先生が2019年9月27日にご逝去されました。

長井先生のRNA研究、特にスプライシング反応・スプライシング因子の構造生物学における多大なるご功績は、世界中のRNA研究者に知られているところです。

英国MRC LMBに留学中の長井先生は、真核生物由来のタンパク質を融合タンパク質として大量に大腸菌内で発現させ、タグを切断して大量の真核生物由来タンパク質を得るシステムを発表しました(Nagai, Nature, 1984)。そのままMRC LMBにご自身の研究室を構えた長井先生は、その卓越したタンパク質と核酸の試料調製技術を基盤として真核生物のスプライシングの反応機構を明らかにすることを目指し、世界に先駆けてU1 snRNP AのRNA結合ドメイン「RNA-recogniton motif(RRM)」のX線結晶構造を明らかにしました(Nagai, Nature, 1990)。その後、U1AのRNA結合ドメインとステムループRNAの複合体(Oubridge, Nature, 1994)やU1 snRNP(Pomeranz Krumme, Nature, 2009)といった、数多くのスプライシング反応に関わる重要な因子の立体構造をX線結晶構造解析により明らかにしました。そして、近年のクライオ電子顕微鏡革命と卓越した試料調製技術の融合により、長井先生は様々な状態のスプライソソームの立体構造を明らかにし、スプライソソームの触媒機構すなわちスプライシングの反応機構を明らかにしてきました。

今年2月の武田シンポジウム(大阪)におけるクライオ電子顕微鏡を用いた最新のスプライソソーム構造のご発表はまだ記憶に新しく、これからのますますのご活躍が期待されていただけに、この度のご訃報に接し驚きを禁じ得ません。長井先生のご冥福を心からお祈り申し上げます。