RNAエッセイ

タンパク合成へ、mRNAの読み枠と開始はどうして決まるのかの謎

タンパク合成の開始に際して、メッセンジャーRNA(mRNA)がリボソームと結合するためにはキャップ構造が必要であることはわかった(第5話)。そして、その結合に際しては、キャップ結合タンパク(eIF4E)がmRNAをリボソームに結合させるために必要であることもわかった(第6話)。しかしながら、そのあとがハッキリしない。mRNAの5′末端に結合したリボソームは、どの様にして、タンパク質を作る最初のシグナルであるAUGコドンへ正しく辿り着くのであろうか? これが謎だった。

ベンチャーからノーベル賞

PCR(Polymerase Chain Reaction)は、微量のRNAやDNAを増幅する技術であり、いまや遺伝子研究に無くてはならない技術だ。世界中の大学や研究所で使われ、産業面での応用も、医学、薬学、医療診断、考古学、犯罪捜査など途方もなく広く役に立っている。この技術は火葬の後の骨にのこる超微量のDNAからも、RNA やDNA配列を何億倍にも増幅して個人を特定できるほどにも鋭敏なので、世界中の大学のバイオ研究室や診断会社で使われていて、機器・試薬・消耗品を加算すれば、累積数兆円という巨額の経済効果をあげていると想定できる(図1)。

 松山城のお堀の周りを早朝にランニングしていると、眠っている白鳥の姿を見ることができます。「へー、白鳥ってこんな寝方をするんだ」人は、知っているようで知らないことがたくさんあるということに、改めて気づかされます。私が初めてRNA学会に参加したのは2007年、名古屋国際会議場「白鳥ホール」。今年の富山開催で、RNA学会10年目。まだまだRNAについて知らないことだらけです。申し遅れましたが、愛媛大学大学院・理工学研究科の冨川千恵と申します。以降、駄文が続きますが、お許しください。 

先日の新潟での日本RNA学会年会の特別講演で、古市泰宏先生が、「研究者には二つのタイプがある。それは研究テーマを変える人と変えない人」、とおっしゃっていたが、私は後者に当たるだろう。その実情は、取りたてて褒められるようなことではなく、次から次からへと面白い問題があり、単に研究テーマを変える暇がなかっただけである。年会の会場で、片岡直行さんと北畠真さんから、「スプライシング発見40周年に際し、会報にぜひ何か寄稿してください」、と依頼された。満足していただける文章が書けるか、あまり自信はない。しかし、ちょいと数えてみると、今年はスプライシング研究に関わってから35年にもなり、スプライシング研究の歴史と、ほぼ重なっているではないか。運良くアメリカでスプライシング研究の中心に長く身を置くことができたこともあり、研究の最前線を実体験できた。これを機会に自分の研究経歴を気軽に振り返ってみるのもいいかと思って、引き受けることにした。研究者をめざす若い人に何かを伝える〜といった上から目線でなく、論文を熟読しても決してわからない、研究現場の舞台裏を、まあ面白おかしく楽しんでもらえれば十分かと思う。

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