RNAエッセイ

2020年12月末に、mRNAワクチンについて解説したエッセイを日本RNA学会のホームページに執筆した。このエッセイは、元々日本RNA学会の会員や医療関係者といった医学、生物学、生化学などの基礎知識がある人に書いたものだったが、予想外にTwitterやFacebookなどのSNSに取り上げられてしまった。また、文系の人でこれを読んだ方もいたようだ。鈴木さんや甲斐田さんは、これは立派なアウトリーチ活動 (一般向けへの専門技術解説) ですよと言ってくれたのだが、筆者としては世の中の情報拡散速度に、驚くばかりである。コロナ禍は大変な社会問題だが、この中で多くの人が “RNA”、というキーワードを知った事は重大だ。願わくは学会に参加する研究者、学生や、企業の協賛など少しでも増えてくれればいいと思っている。

はじめに

最近特に話題になっているmRNAワクチン。このmRNAにはキャップ構造がついていて、それが細胞内での翻訳には必須である。翻訳におけるキャップ構造の重要性は言うまでもない。古市先生による会報での素晴らしい連載により、日本RNA学会の会員の方々には、キャップ構造がどのようにして発見され、いかに重要かが伝わっていることと思う。今キャップ構造が再び注目されているこの時を、キャップ構造について大学院時代に研究をしてきた自分にとっては、大変嬉しく思う。その反面、キャップ構造は核内でも重要だということをみなさんはご存知だろうか、eIF4E以外に、NCBP1、2と現在データベース上で言われているキャップ結合タンパク質の存在をご存知だろうか、と思う時がある。会報を編集されている富山大学の甲斐田さんにお話ししたところ、許可をいただいたので、私が大学院時代に経験した、核内キャップ構造結合タンパク質精製への道のりを書かせていただくことにした。多くの会員の方は、核内キャップ構造結合タンパク質を精製、報告した二つの研究室のうち一つは日本の研究室だということをご存知ないかもしれない。そのことを知っていただくとともに、私がここから得た教訓を、特に若い会員の皆さんにお伝えできれば、と思う。

この2年間のコロナウイルスによる厄災を振り返ると、色々の記憶が重なって感慨深い。自粛のストレスや、経済の沈静化、緊急事態宣言など暗いニュースの中で、マスコミの報道がやたら騒がしかった。武漢での感染発生から始まり、ダイヤモンドプリンセス号、世界での惨状、PCR騒ぎ、コロナ治療薬、新型ワクチンの副作用、ワクチン接種の実施、コロナと五輪をネタにした政治闘争、そして、今後は国産ワクチンの開発をどうするかなどへ続くだろう。話題は次々に登場し、踊り、消えてゆくのであるが、mRNAワクチンの製造技術は、未知の新型ウイルスに対しても短時間で対処できるうえに、抗がん剤などへ応用できるうえに、国防上も非常に重要であるので、この国の根幹にかかわる技術として、是非、根付かせたいものである。そんなことで、老生もこの問題から目を離すわけにも行かず、25話から30話まで6話も続けてコロナに関するエッセイを書くことになってしまったが、これを最後としたい。

コロナウイルスの話題は、デルタ株のせいで、またまた、熱くなってしまったが、いっとき、その話題から離れてのんびりしたい。東京オリンピックやパラリンピックも、数々の感動を添えて、いまだ記憶に鮮明だが、この間にメジャーリーグ・ベースボール(MLB)での大谷翔平選手の着実な活躍が素晴らしい。コロナ自粛で重苦しく暗い世相の中で、ここ数か月間、MLBでの大谷選手の毎日の活躍は、日本国に明るいニュースを届けてくれていて真に嬉しい。

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