EMBO WORKSHOP参加レポート

投稿者 木村悠介 (東京大学大学院新領域創成科学研究科)

東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程2年の木村悠介と申します。この度、2019年9月にドイツのハイデルベルクで開催されたEMBO WORKSHOP「Protein Synthesis and Translation Control」への参加をご支援いただき、心より感謝申し上げます。学会の様子や出来事等についてご報告させていただきます。

今回参加した学会は翻訳研究が中心の数少ない国際学会の1つで、私の最も参加したい学会の1つでした。学会の参加登録を済ませると、電子版の要旨集が送られてきました。参加者を確認すると、よく論文で拝見していた研究者やそのラボメンバーの名前が多く、テレビに写っている芸能人に会えるような高揚感を覚えました。そのような高揚感と初めて翻訳の国際会議に参加できることへの喜びを感じながら、ドイツへと出発しました。東京からハイデルベルクは飛行機とバスで移動しました。ハイデルベルクはドイツ最古の大学や古城があり、中世ドイツを強く感じられるレトロな街並みが印象的な場所でした。

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写真1. ハイデルベルグ城からみた街並み

学会1日目

初日は午後から始まり、学会受付と3つのkeynoteトークがありました。特に印象深かったのはErin M. Schuman博士 (Max Planck Institute) のトークです。細胞内のタンパク質分解経路を阻害すると、eIF2αがリン酸化され、翻訳量を低下させることで総タンパク質量を維持しようとするタンパク質量を補償する機構について報告されていました。翻訳を介したタンパク質量の恒常性維持に関わる細胞内の巧妙なシステムは非常に興味深かったです。

図2
写真2. 学会会場のポスター

学会2日目

この日は翻訳伸長・終結、品質管理と代謝・疾患の2つのセッションとポスター発表がありました。特に印象深かったのはMyriam Gorospe博士 (NIH) のトークです。老化細胞でよく知られているグローバルな翻訳量の低下とミトコンドリア活性低下という2つの表現系の関係性を解析し、翻訳低下がミトコンドリア機能低下を促す分子機構の一端を明らかにし、老化を促進させるメカニズムについて報告されていました。

学会3日目

この日は私もポスター発表を行いました。私は「重力を介した翻訳制御」という少し変わった研究をしているので、研究内容を超えた質問なども多かったですが、答えのない想像的な議論も楽しむことができ、非常に良い経験になりました。以前、リボソームプロファイリング法を習いにNicholas Ingolia博士 (UC Berkeley) の研究室に伺った時に、仲良くしていただいたラボメンバーも発表を聞きに来てくださり、昔話や研究室の話もすることができ、非常に楽しい時間となりました。

図3
写真3. ボスター発表の様子

学会4日目

学会最終日。解析手法とインターコネクト・ターンオーバーの2つのセッションとポスター発表がありました。特に印象深かったのはCan Cenic博士 (UT Austin) のトークです。マイクロ流路内で、微量サンプルからリボソームプロファイリングを行っていました。この技術が改良され、1細胞レベルで翻訳を解析できるようになれば、翻訳研究はこれまで以上に奥深く、面白い研究分野になっていくだろうと想像しながら、興味深く伺っていました。

学会も無事に終わり帰国すると、成田空港は非常に混雑しており、台風15号の影響で成田空港は「陸の孤島」になっていました。この後、私がどうなったかという長い話はまた別の機会にお話させていただければ幸いです。
最後になりますが、日本RNA学会さまからの国際学会参加費支援により、忘れられない貴重な経験をさせていただけたことに心より感謝申し上げます。