第1回日本RNA学会年会

▷ 第1回 日本RNA学会年会の記録

近年、RNA研究は、転写、プロセシング、輸送、翻訳過程などの細胞分子生物学的な分野で大きく進展するとともに、発生・分化、神経系、病態など生体の高次の情報発現に関する研究分野へと広がりを見せています。本会は、この状況を踏まえ、「RNA学会」(本年発足予定)の主催により、従来の「RNA研究若手の会」の発展型として、分野を問わず気軽に「RNAに関わる研究者、学生が発表、交流、情報交換できる場」を提供する事を目的としています。
 
カレント・トピックスのご案内
ユニークな研究を行っておられる若手研究者の方々に講演をお願いしています。予定演題は下記の通りです(敬称略)。
一色 正之 (奈良先端大・バイオ)
「米の食味におけるスプライシング制御」
森田 美代 (HSP研究所、現 奈良先端大・バイオ)
「mRNA の二次構造により制御される熱ショックシグマ因子(s32)の翻訳誘導メカニズム」
秋山(小田) 康子 (京大・医・分子細胞情報学)
「グリア・ニューロンを生み出す非対称性の分子機構」
 
参加申込方法
名前、所属、身分、連絡先(住所、電話、電子メールアドレスなど)、発表希望の有無、ご自分の研究分野に関するキーワード5つ程度を、なるべく電子メールで世話人までご連絡下さい。
 
発表申込方法
発表希望者は演題名、要旨(A4の1頁以内の長さ)を、電子メール(またはフロッピーディスク)でお送り下さい。なお、希望者が多数の場合、ポスター発表とさせていただく場合があります。
 
申込・問合せ先(年会世話人)
井上 丹
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町 京都大学大学院生命科学研究科
Tel:075-753-3995 FAX:075-753-3996
E-mail:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
 
井上 邦夫
〒630-0101 生駒市高山町8916 奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科
Tel:0743-72-5558 FAX:0743-72-5559
E-mail:このメールアドレスはスパムボットから保護されています。閲覧するにはJavaScriptを有効にする必要があります。
 
発表者へのご案内
口頭発表
スライド、またはOHPが使用可能です。
一般の口演時間は、発表10分、質疑・討論2分です。タイトなスケジュールになっておりますので、時間厳守でお願い致します。
 
ポスター発表
パネルのサイズは、120cm(幅) x 240cm(高さ)です。形式は特に定めませんが、上部にタイトル、発表者名・所属を掲示して下さい。
パネルには発表番号が貼ってありますので、所定のパネルにお貼り下さい。押しピンは会場に準備してあります。
 
▷ 会長挨拶
志村令郎会長の挨拶
この度、日本RNA学会が設立されました。この設立の背景となったのは、何よりも先ず RNA 研究が近年飛躍的に発展し、様々な重要な発見がなされ、さらに高次複合形質の発現制御も含めた生物・生命科学の色々な領域に RNA が関与していることが明らかになったことが挙げられます。また我が国の RNA 研究には伝統もあり、加えていくつかの重点領域研究、特定領域研究等の文部省科学研究費補助金を受けて、RNA 研究は裾野が広がり、質量共に発展してきたことも重要な背景となっております。
 
こうした中で、我が国における RNA 研究の更なる発展と、若手研究者の育成を目的として、この学会は設立されたのであります。しかしながらそれに到る迄には、煩雑な問題や困難な問題が少なからずありましたが、関係各位の情熱と献身的な努力に依って、設立に漕ぎ着けることが出来ました。ここに改めてこれら関係各位に深甚の感謝を申し上げたいと思います。
 
勿論、この学会は、このような設立に尽力された人たちだけのものではなく、RNA 研究に直接あるいは間接に興味を持つ総ての人たちのものであります。若手の研究者や院生でも気楽に討論に参加出来るような、自由闊達な雰囲気を持つ生き生きした学会になって欲しいと思っております。研究者とりわけ若手の研究者は、この学会を足掛かりにして、大きく飛躍していって欲しいと思います。 RNA に関する研究分野において、我が国から骨太の優れた研究成果が得られることに少しでも役立つことが出来れば、この学会を設立したことの意義は十分にあると思っております。会員の皆さんの更なる努力と、研究の発展を心から期待しております。
 
▷ 口頭発表プログラム
8月3日(火)
「学会受付」
「開会の挨拶」
 
セッション1 『 mRNA動態 』 (座長:中村義一)
カレント・トピックス1:
mRNAの二次構造により制御される熱ショックシグマ因子(σ32)の翻訳誘導メカニズム
○森田美代1、田中好幸2、児玉高志3、京極好正3、柳秀樹4、由良隆4
(1奈良先端大、2工技院、3阪大蛋白研、4HSP研)
主要転写開始因子σは分子温度計か?
○佐藤由美子、永井宏樹、Taciana Kauscikovic*、Richard S. Hayward*、嶋本伸雄
(遺伝研・構造遺伝学センター、*Edinburgh Univ.)
大腸菌Rho-independent terminatorの機能解析:転写と翻訳の相互作用
○大井いずみ、阿保逹彦、安倍裕順、饗場弘二
(名大院・理・生命理学)
枯草菌SRP様粒子構成成分scRNAのAluドメイン結合蛋白質の解析
山崎高生、鈴間聡、○中村幸治、山根國男
(筑波大・生物科学)
mRNAキャッピング酵素システムによるキャップ形成機構
○水本清久、塚本俊彦、柴垣芳夫、深町伸子、小林 薫
(北里大・薬・生化学)
Mycoplasma capricolum MCS4 RNA結合タンパク質の同定
○牛田千里、笹木哲治、安藤候平、松田貴意、武藤 あきら
(弘前大・農学生命科学部)
RNA切断因子GreA、GreBの作用機構と遺伝子アレイを用いた細胞内での役割の推定
○嶋本伸雄、久堀智子、Ranjan Sen、永井宏樹、須佐太樹
(遺伝研・構造遺伝学センター)
葉緑体のRNAエディティング部位認識を司るRNA結合タンパク質
○廣瀬 哲郎、杉浦 昌弘
(名古屋大・遺伝子)
 
セッション2 『 翻訳 』 (座長:渡辺公綱)
mRNAの識別と特異的分解ーT4ファージ遺伝子サイレンシングからの展開ー
○上野 博之1、甲斐 歳恵2、米崎 哲朗1
(1阪大・院理・生物科学、2ニュージャージー医科歯科大学)
葉緑体の転写と翻訳を仲立ちするRNA結合蛋白質の解析
○中村崇裕1、太田賢2、杉田護1,3、杉浦昌弘1
(1名古屋大・遺伝子、2工技院生命研、植物分子、3名古屋大・人間情報)
バクテリアペプチド鎖解離因子RFの機能ドメイン解析
○宇野麻紀子、伊藤耕一、中村義一
(東大・医科研)
tmRNAによるtrans-translationメカニズムの解明
○姫野俵太1,2、行木信一2、只木敏雅2、石井秀春2、葛西学2、伊藤健一2、
Brice Felden3、John F. Atkins3、Raymond F. Gesteland3、武藤あきら1,2
(1弘前大学農学生命科学部、2弘前大学理学部、3University of Utah)
リボソームGTPaseセンターにおけるrRNAとタンパク質の機能的相互作用
○内海 利男1、本間 佐知子1、野村 隆臣1、遠藤 弥重太2、八森 章1
(1信州大・繊維・高分子研、2愛媛大・工・応用化学)
ミトコンドリアリボソームにおけるRNAからタンパク質への役割委譲
○鈴木 勉1、寺崎真樹2、竹本千重3、花田孝雄1、和田 明4、上田卓也1,2、渡辺公綱1,2
(1東大院 工、2東大院 新領域、3学習院大、4大阪医大)
A highly efficient and robust cell-free protein synthesis system Sprepared from wheat embryos
○Yaeta Endo、Kairat Madin、Tomio Ogasawara and Tatsuya Sawasaki
(Department of Applied Chemistry、Faculty of Engineering、Ehime University)
 
8月4日(水)
セッション3 『 tRNA 』 (座長:横山茂之)
tRNA・アミノアシルtRNA合成酵素システムの情報機能の構造基盤
深井周也、濡木 理、関根俊一、嶋田 睦、石谷隆一郎、Dmitry G. Vassylyev、○横山茂之
(東京大学・大学院理学系研究科・生物化学専攻、理化学研究所・播磨研究所)
アルギニルtRNA合成酵素によるアルギニルtRNAの識別機構
○嶋田 睦1、濡木 理1,2、五島 美絵3、瀧尾 擴士4、横山 茂之1,2
(1東大院理・生化、2理研・細胞情報伝達、3日本女子大・物質、4理研・生体分子解析室)
酵母tRNA endonucleaseは核ではなくミトコンドリアに局在する
○吉久 徹1,3、柚木 芳2,3、田中 信幸3、大嶋 智恵3、遠藤 斗志也3
(1名大・物質科学国際研究センター、2現・東洋紡、3名大院・理・物質理学)
ミトコンドリア病変異tRNAにおけるアンチコドン修飾塩基の欠損
○安川 武宏1、2、鈴木 勉1、上田 卓也3、渡辺公綱1、3、太田 成男2
(1東大・院・工・化生、2日医・老研・生化学、3東大・院・新領域・先端生命)
トリプトファニルtRNA合成酵素を標的とした抗生物質indolmycinの作用機構
○北畠真1*、Yuhui W. Yin1、Kamilah Ali1、Mette P. Ibba1、Charles W. Carter Jr.2、Dieter
(Yale University1、North Carolina University2、*理研・細胞情報伝達)
異常な2次構造をもつtRNAの翻訳活性
○花田 孝雄1、鈴木 勉1、横川 隆志2、竹本 千重3、渡辺 公綱4
(1東大院 工、2岐阜大 工、3学習院大 理、4東大院 新領域)
 
セッション4 『 Catalytic RNA/selection 』 (座長:井上丹)
Composition of the conserved core of Group I intron ribozyme: The catalytic site and its location
○Wataru Yoshioka、Yoshiya Ikawa、Hideaki Shiraishi and Tan Inoue
(Graduate School of Biostudies、Kyoto University)
Selection of RNA-binding peptides that activate a group I intron ribozyme
○Shota Atsumi、Yoshiya Ikawa、Hideaki Shiraishi and Tan Inoue
(Graduate School of Biostudies、Kyoto University)
CDK阻害因子p16INK4aを選択マーカーとした活性型リボザイムのin vivo セレクションシステムの構築
○川崎広明1,2、浜田麻紀子1,2、多比良和誠1,2
(1工技院・融合研、2筑波大・応生)
HIV Tatタンパク質に高い親和性で結合するRNAアプタマーを用いたHIV転写の抑制
○山本 利香1,2,3、西川 諭2、多比良 和誠1,3、PKRクマール2,3
(1筑波大・応生、2工技院・生命研、3工技院・融合研)
RNA結合タンパク質及びRNAアプタマーの構造決定とRNA-タンパク質相互作用の解析
○片平正人、小林央典、榎園能章、渡辺道直、宮ノ入洋平、松上明正、大橋粛、永田崇、小林伸一郎、菅野玲介、松田剛、栗原靖之、上杉晴一、石川冬木1、岡野栄之2、P. Kumar3
(横浜国大・工、1東工大・生命理工、2阪大・医、3工技院・生命研)
RasとRaf-1の相互作用を特異的に阻害するRNAアプタマー
○木本 路子1、2、白水 美香子2、水谷 伸3、小出 寛3、上代 淑人3、平尾 一郎4、横山 茂之1,2,4
(1東大・院理、2理研・細胞情報伝達、3東工大・生命理工、4科技団・ERATO・横山プロジェクト)
同一部位を標的とした2種のリボザイム及びDNA酵素の反応速度論的比較
○田中照通、乾統、菊池洋
(豊橋技術科学大学 工学部 エコロジー工学系 生物基礎工学大講座)
 
セッション5 『 スプライシング制御 』 (座長:萩原正敏)
カレント・トピックス2:
コメの食味を制御するwaxy RNAのプロセシング
○一色 正之1、森野和子1、山本義章1、井澤 毅1、中島みどり2、佐藤 光3、島本 功1
(1.奈良先端大バイオ、2.三菱化学、3.九大農)
RNAポリメラーゼ II の mRNA前駆体スプライシングにおける役割
○広瀬 豊
(金沢大学・がん研・細胞情報調節)
分裂酵母の温度感受性pre-mRNAスプライシング変異株prp12の原因遺伝子はヒトSAP130の相同因子をコードする
○羽原靖晃1、漆山誠一1、3、谷時雄1、2、大島靖美1
(1九大・理学研究科・生物科学、2さきがけ21、3現名古屋大・生命理学・CREST)
キナーゼ阻害剤によるSF2/ASFの核内凝集と転写部位からの隔離
○遠藤仁司、早川盛禎、植野恵理子
(自治医大・生化学)
スプライシング促進配列を制御することによるエクソンスキッピングの誘導を用いたDuchenne型筋ジスロトフィーの治療戦略
○竹島泰弘1,3、伊東利幸2、Pramono ZAD2、坂本博4、井上邦夫5、中村肇1,3、松尾雅文2,3
(神戸大・医・小児1、国際交流2、遺伝子診療部3、理・生物4、奈良先端大・バイオ5)
ヒトF1γ mRNA前駆体のエキソン9の選択と除外に関与する調節領域の解析
○早川盛禎、植野恵理子、遠藤仁司
(自治医大・生化学)
 
セッション6 『 輸送・局在 』 (座長:谷時雄)
mRNA核外輸送の分子機構:分裂酵母mRNA核外輸送変異株の解析
並木健1、古川博美1、吉田准一1、渋谷利治1、重松朝子1、大島靖美1、○谷時雄1,2
(1九大・理学研究科・生物科学、2さきがけ21)
Npl3pと未知蛋白YIL079cとの結合はRGGのメチル化によって制御される
○井上浩一1,2、水野貴之1、萩原正敏2
(1SEEDS・ゲノムインフォーマテクス・NEDO、2東京医歯大・難治研・形質発現)
RNA結合タンパク質の核ー細胞質間輸送の分子機構
○塩見美喜子、塩見春彦
(徳島大学ゲノム機能研究センター)
RNA helicase A の細胞内局在変化の解析
○大石貴之1、大島隆幸1、荒谷聡子1、藤井亮爾1、天野徹也1、今本尚子2、米田悦啓2、深水昭吉1、中島利博1
(1筑波大学・応用生物化学系、2大阪大学大学院・医学系研究科(A3)・情報伝達医学専攻)
14-3-3タンパク質Rad24によるRNA結合タンパク質Mei2の制御
佐藤政充、秋吉祐司、○渡辺嘉典、山本正幸
(東大・院理・生化)
tRNA連結型リボザイムの活性と核-細胞質間輸送:成熟したtRNAしか細胞質へ輸送されないという報告は正しいか?
○多比良和誠
(工技院・融合研、筑波大・応生)
 
「総会」
「会長の挨拶」
「ポスター・セッション」
「懇親会」
 
8月5日(木)
セッション7『 発生・分化とRNA(1) 』 (座長:井上邦夫)
ショウジョウバエDEAD-box protein、Me31Bの卵形成過程における細胞内局在とその機能
○中村 輝1、網蔵令子1、小林 悟1,2,3
(筑波大・生物科学1、遺伝子実験センター2、TARAセンター3)
Drosophila胚発生におけるoskarRNAの局在依存的翻訳調節
○矢野 環、松居 靖久、Anne Ephrussi
(大阪母子保健・病因病態、EMBL)
ゼブラフィッシュ生殖細胞形成過程におけるDAZ-like 遺伝子の役割
○前川 真吾、人羅 俊実、安田 國雄、井上 邦夫
(奈良先端大・バイオ・分子発生)
受精直後のマウス初期胚における母性型SSEC-D RNAの伸長・短縮・分解
○桜井敬之1、2、水谷晃子1、菊池イアーラ幸江1、菊地奈都子1、梶原景正2、佐藤正宏2、田中正史1、2、木村穣1、2
(1東海大・医学部、2東海大・総合医学研)
ボルボックス生殖細胞の分裂開始時に特異的に高発現する非コードRNAの解析
○白石 英秋、井上 丹
(京都大学大学院・生命科学研究科)
XIST RNAによる染色体構造と活性の制御
○吉田郁也
(北大・遺伝子、地球環境)
 
セッション8 『 発生・分化とRNA(2) 』 (座長:塩見春彦)
脆弱X症候群はRNA発現異常に伴う遺伝病のパラダイムとなるか?
○塩見春彦、塩見美喜子
(徳島大学ゲノム機能研究センター)
Vimentin 会合性 hnRNP S1 蛋白質 C2 / D2 と細胞遊走
○渡辺章範1,2 富永和作1 津川克治3 金田研司1 井上晃1
(1 阪市大・医 2 阪大・微研 3 阪女大・理学)
ショウジョウバエhiiragi遺伝子の単離と機能解析
○村田 武英、長曽 秀幸、渡辺 早苗、岡野 栄之*、横山 和尚
(理化学研究所・ライフサイエンス筑波研究センター、*大阪大学・医学部・神経機能解剖学)
線虫C. elegansにおけるSR蛋白質特異的キナーゼの役割
○木村友美1、和多和宏1、久本直毅2、松本邦弘2、萩原正敏1
(1 東京医科歯科大学 難治疾患研究所、2 名古屋大学 理学研究科 生命理学専攻)
ショウジョウバエおよび線虫の生殖細胞におけるDmnk、Ce-Cds1キナーゼの機能
○大石勲1、岩井健二1、藤本浩子1、大谷浩2、澤斉3、岡野栄之3、山村博平1、南康博1
(1神戸大・医・一生化、2島根医大・一解剖、3阪大・医・神経機能解剖)
 
セッション9 『 神経分化・機能とRNA 』 (座長:坂本博)
カレント・トピックス3:
グリア・ニューロンを生み出す非対称性の分子機構
○秋山 康子
(京大・医・分子細胞情報学)
微小管結合因子Nau/STOPの3'UTRの神経分化での機能
○勝部憲一、坂本啓、高木実、武田伸一*
(東京医歯大・歯・口腔病理、*国立精神・神経センター・神経研・遺伝子工学)
神経細胞シナプス部位に輸送されるmRNAの探索と解析
○石本哲也1,2、二宮賢介2、宮地和恵2、藤森一浩3、植田淳子2、葛西道生2、田口隆久1
(1通産省・大工研・脳神経工学ラボ、2阪大・院・基礎工、3福井医大・解剖)
神経特異的SRタンパク質、NSSR 1および2のクローニングと機能解析
小松 雅明、荒畑 喜一、○塚原 俊文
(国立精神・神経センター 神経研究所 疾病1部)
神経特異的RNA結合蛋白質HuDはレチノイン酸によるP19細胞の神経分化誘導に必須である
○笠嶋 克巳、坂本 博
(神戸大・自然科学)
神経特異的RNA結合蛋白質マウスHuファミリーは、ニューロン分化を正に制御する
○赤松 和土1.2 ,吉田 哲1,大隅 典子3,James Okano4,榊原 伸一1,宮田 卓樹1,三浦 正1,松尾 宣武2,Robert B Darnell4,岡野 栄之1
(1.阪大・医・神経解剖、科学技術振興事業団CREST、2.慶應大・医・小児科、3.東北大・医・器官構築学、4.ロックフェラー大)
神経機能・胚発生に関与するRNA結合蛋白質qkI機能の発生遺伝学的解析
○阿部訓也、近藤龍也、李正哲、光永佳奈枝、要匡、 山村研一
(熊本大学・医学部・遺伝発生医学研究施設)
 
「閉会の挨拶」
 
▷ ポスター発表プログラム
ポスター番号
1) RNA helicase A の転写活性化最小領域の解析
○荒谷聡子、大島隆幸、大石貴之、藤井亮爾、深水昭吉、中島利博
(筑波大 応生)
2) 葉緑体分化に伴う翻訳制御機構の解析
○井手上 賢、廣瀬 哲郎、杉浦 昌弘
(名古屋大・遺伝子)
3) hnRNP S1 タンパク質 C2 の分子構造と二元性機能
○井上 晃1、西尾 康二2、木下喜博3、三田四郎
(1阪市大・医学部・生化学、2名古屋大・医学部・解剖、3大阪成蹊女子短大、4参天製薬KK・探索研)
4) Ribosomal RNA apurinic site specific lyase, a novel enzyme found in wheat germ that specifically cleaves the phosphodiester backbone at an apurinic site in rRNA
○Tatsuya Sawasaki, Tomio Ogasawara, Ryo Morishita, Akihiko Ozawa, Kairat Madin, & Yaeta Endo
(Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Ehime University)
5) Deletions within the P3-P9 domain of the Tetrahymena group I intron do not cause perfect loss of its catalytic activity.
○Yoshihiko Oe, Yoshiya Ikawa, Hideaki Shiraishi and Tan Inoue.
(Graduate School of Biostudies, Kyoto University)
6) RNA ヘリケース A(RHA)による遺伝情報発現機構の解析
○大島隆幸、荒谷聡子、大石貴之、藤井亮爾、藤田英俊、中野真宏、深水昭吉、中島利博
(筑波大学・応用生物化学系)
7) 転写反応による非天然型塩基のRNAへの位置特異的導入
◯1大槻高史、2石川正英、2三井雅雄、2野島高彦、2平尾一郎、1、2、3横山茂之
(1理研・ゲノム、2科技団・ERATO・横山プロジェクト、3東大・院理)
8) オルガネラにみられる感染/転移性イントロンの挙動-種内脱感染モデル
○大濱 武、渡辺 一生、江原 恵、平岩 呂子
(生命誌研究館/阪大・理/神戸大・内海域)
9) 細胞毒性を持つRNA制限酵素、コリシンE5のユニークな構造と機能
○小川 哲弘1、井上 咲良1、渡辺 公綱2、魚住 武司3、正木 春彦1
(1東大院・農生科、2東大院・新領域創成科、3明治大・農生)
10) Tetrahymena ribozymeによるE.coliの形質転換の解析
○金原 和江、渥美 正太、井川 善也、白石 英秋、井上 丹
(京大・生命科学)
11) ARE 結合タンパク質AUHおよびRNAとの複合体の高次構造解析
○栗本 一基1,武藤 裕1,濡木 理1,2,横山 茂之1,2
(1東大・院理・生化,2理研・細胞情報伝達)
12) tRNA連結型リボザイムの細胞質内局在化:成熟したtRNAしか細胞質へ輸送されないという報告は正しいか?
◯桑原知子、佐野将之、藁科雅岐、多比良和誠
(筑波大・応生、工技院・融合研)
13) スプライシングにおける SR タンパク質リン酸化の役割
○小泉 順、小野木 博、萩原 正敏
(東京医科歯科大・難治研・形質発現)
14) 分裂酵母の減数分裂制御に必須なmei RNAの機能領域の特定
○佐藤政充、渡辺嘉典、山本正幸
(東大・院理・生化)
15) 固相化DNAプローブ法を用いたRNA精製法の改良
○鈴木健夫1 鈴木勉1 渡辺公綱2
(1東大院 工、2東大院 新領域)
16) ゼブラフィッシュbruno-like遺伝子の解析
○鈴木 仁、前川真吾、安田國雄、井上邦夫
(奈良先端大・バイオ)
17) 枯草菌DEADボックス型RNAヘリカーゼ相同遺伝子の検索と機能解析
◯鈴間聡、吉野桂子、中村幸治、山根國男
(筑波大・生物科学)
18) 古細菌の tRNALeuの認識機構
○1相馬亜希子、2内山清人、2坂本輝路、2前田美帆、1,2姫野俵太
(1岩手大・連合農学、2弘前大・農学生命)
19) 大腸菌PriAタンパク質によるD-ループ及びR-ループ構造の認識とDNA複製の開始
田中 卓、新井 賢一、○正井 久雄
(東大医科研・分子細胞制御)
20) ヒト悪性リンパ腫における新規 snoRNA host gene (U50HG)の解析
○田中 りつ子、佐藤 均、吉田 祥子、中村 義一、渡邉 俊樹、森 茂郎
(東大・医科研)
21) HIV-1ゲノムRNAの二量体化開始部位の結晶化
○1角田 大、1池 功二郎、2高橋 健一、3小柳 義夫、4山本 直樹、2高久 洋、2河合 剛太、1竹中 章郎
(1東工大院・生命理工、2千葉工大・工、3東北大・医、4東京医科歯科大・医)
22) 骨格筋から分離・同定した運動ニューロン生存活性を持つ物質はRNAであった
○程久美子1、高宮正也2、永野昌俊1、鈴木秀典1、片岡宏誌2、宮田雄平1
(1日医大・薬理、2東大・農・農学生命科学)
23) 進化分子工学による人工リガーゼリボザイムの創製
○寺本 直純1、宮本 義孝2、伊藤 嘉浩3、今西 幸男2
(1京大・工・材料化学、2奈良先端大・物質・高分子創成、3徳島大・工・生物工学)
24) HIV-I/HTLV-I のmRNA核外輸送の細胞性因子であるhCRM1の変異体解析
○博多 義之、志田 壽利
(京大・ウイルス研究所・高次生体)
25) 大腸菌tmRNAにおけるtRNA-like domainの役割
○塙 京子、姫野 俵太、武藤 あきら
(岩手大学大学院 連合農学研究科)
26) 葉緑体のRNAエディティング部位認識を司るRNA結合タンパク質
○廣瀬 哲郎、杉浦 昌弘
(名古屋大・遺伝子)
27) RNAランダム配列の自由エネルギー分布とその応用
○二村泰弘1、張武明2、荻上真理3、山本健二4
(東大・1院理・生物化学、2先端研・バイオセンサー、3院理・生物科学、4医・分院・細菌)
28) 4塩基コドンを用いた非天然アミノ酸のタンパク質への部位特異的導入
○芳坂 貴弘、宍戸 昌彦
(岡山大・工・生物機能)
29) Thermus thermophilus tRNA-(Gm18)-methyltransferaseの基質tRNA認識機構
○堀 弘幸1、山崎紀彦2、松本 隆3、渡辺洋一4、上田卓也、西川一八5、熊谷 泉6、渡辺公綱
(東大・工、新領域:現所属、1日本医大・一生化、2大塚製薬・微生物研、3農水省・生資研、4Dalhousie Univ、5岐阜大・工、6東北大・工)
30) Yボックス蛋白質の構造とRNA結合活性
○松本 健、青木一真、辻本雅文
(理研・細胞生化学)
31) ラン藻を用いたin vitro翻訳系の開発とpsbAI遺伝子の翻訳制御機構の解析
○陸田 径典 1、杉田 護 1 2、杉浦 昌弘 1
(1 名古屋大・遺伝子、2 名古屋大・人間情報)
32) Euplotes octocarinatusのコドン使用
○村松 知成1, Brunen-Nieweler2,Klaus Heckmann2, 口野嘉幸1
(1 国立がんセンター研究所生物物理部、2 Munster大)
33) RNA制限酵素であるコリシンE5の立体構造解析
矢嶋俊介1、小川哲弘2、野中孝昌3、三井幸雄3、○正木春彦2、大澤貫寿1
(1東農大・応生科、2東大院農生科・応生工、3長岡技大・生物系)
34) マボヤHalocynthia roretziミトコンドリアRNAの解析
○横堀伸一、村松由里、曽我部崇、大島泰郎
(東京薬大・生命科学・分子生命)
35) ポリアミンによるOppA蛋白質合成促進機序
○吉田 円1、D. Meksuriyen2、柏木敬子1、河合剛太3、五十嵐一衛1
(1千葉大・薬、 2チュラロンコーン大・薬、3千葉工業大・工)
36) ハンマーヘッドリボザイムに対するCd2+のレスキュー効果の再考察
○吉成幸一、多比良和誠
(工技院・融合研)
37) Molecular Contacts in Ribosmal decoding
○Satoko YOSHIZAWA1 Dominique FOURMY1 Joseph D. PUGLISI
(Dept of Structural Biology,Stanford University, USA, 1Present Addresses; CNRS-ICSN, Gif-sur-Yvette, France)
38) DNA enzymeを用いた遺伝子発現抑制とその基質特異性
○藁科雅岐1,2、桑原知子1,2、小比賀 聡3、今西 武3、多比良和誠1,2
(1工技院・融合研、2筑波大・応生、3阪大・薬)
39) ウシミトコンドリアセリルtRNA合成酵素は異常構造をもつ二種類のセリンtRNAをいかに認識するか
○島田信量1 横川隆志2 竹内野乃3 鈴木勉1 上田卓也1,4 渡辺公綱1,4
(1東大院 工、2岐阜大 工、3ツole polytechnique 仏、4東大院 新領域)
40) RNA結合蛋白質hnRNP B1のヒト肺がんにおける発現亢進と発がんにおける意義
○末岡栄三朗1、後藤有里1,2、松山悟1、末岡尚子1、神津知子1、藤木博太1
(埼玉がんセ・1研、2東京医大・歯)
41 ) 真核遺伝子リコーディング部位における翻訳終結とリコーディングの競合
Karamysheva Zemfira1、伊藤 耕一2,3、Karamyshev Andrew2,3、
中村 義一2、○松藤 千弥1
(1慈恵医大・医、2東大・医科研、3生研機構)
42 ) RNA結合タンパクAUF1/hnRNPDアイソフォーム群の細胞内局在性による機能分離
○荒尾 行知1,2、栗山 麗子1、加藤 茂明1
(1東京大学・分生研、2 現在 自治医科大学・衛生学)
 
▷ 学会風景
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口頭発表
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ポスターセッション
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懇親会
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▷ 学会見聞録「第1回RNAミーティング」
[共立出版の許可を得て,蛋白質 核酸 酵素,44,2619-2622(1999)より転載]
 
坂本 博(神戸大学理学部生物学科)
谷 時雄(九州大学理学研究科生物科学専攻)
 
本年8月3日から5日までの3日間、日本におけるRNA研究のさらなる発展をめざした学会である「日本RNA学会(The RNA Society of Japan)」が創設され、同時にその年会である「第1回RNAミー ティング」が猛暑の京都で開催された。参加者は大学 院生を含めて240名を越え、会場となった京大会館の会議室は新しい学会の創設にともなう熱気と興奮にあふれていた。
 
RNA 研究というと国内では耳慣れない感をもたれる方も多いかも しれないが、国際的にはかなり認知された総合的研究分野で、 もともとは分子生物学研究のメッカとも言える米国ニューヨーク州ロングアイランドのコールドスプリングハーバー研究所 で1970年代から毎年開催されていた研究集会に端を発する分野 である。この国際的なミーティングは当初「tRNAとリボヌクレアーゼ」に関するミーティングであったが、スプライシング など様々な転写後の遺伝子発現過程における現象の発見にと もなって「RNAプロセシング」に関するミーティング(RNA Processing Meeting)と名称を変え、6年前までコールドスプリング ハーバー研究所の主催で毎年開催されていた。ところが、RNA プロセシングの分野でのめざましい研究の進展と研究者人口の増大(1000人を越える)から国際学会設立の気運が高まり RNA学会(The RNA Society)が創立されて、その主催で年会が開催 されるようになり、今年も6月に第4回年会が英国エジンバラで開催された。筆者らも国際的なRNA研究に関するミーティング に時折参加していたが、プラットフォームセッションで発表 される研究成果のレベルの高さに感嘆するとともに、このような活気あるミーティングを是非国内のRNA研究者の間でも定 期的に開催したいと思ったものである。もちろん、日本発の 研究成果がこの国際的なミーティングで発表され、高い評価を受けたこともしばしばあった。
 
今回の日本RNA学会の設立の 背景には、日本におけるRNA研究のレベルが従来から非常に高 かったこと、また約10年前から文部省科学研究費補助金によるRNAに関するグループ研究が継続して行われていること、そし て数年前から国内の若手教官や大学院生を中心にして「RNA研 究若手の会」が組織され活発な研究情報交換が行われるとともに、さらなるRNA研究の活性化の気運が盛り上がってきたこ とがある。なお、日本RNA学会の登録会員数は200名を越え、2 日目に行われた総会で志村令郎生物分子工学研究所所長が初代会長に選ばれた。
 
さて、前置きはこのぐらいにして、このミーティングで発 表された研究報告を以下に紹介しよう。最近のRNA研究の流れ はRNAプロセシング、mRNAの翻訳、リボザイムといった分野にとどまらず、転写機構との関連やRNAの細胞内輸送などの細胞 生物学的分野や、発生、分化、神経系、病態などの生体の高 次複合形質の発現やその制御に関する分野にも広がりを見せている。今回の京都での第1回RNAミーティングでの研究発表 もこの流れを強く反映したものであった。総演題数は100(口 頭発表58、ポスター発表42)にのぼり、口頭発表は9つのセッションに分けて行われた。各演題の要旨は日本RNA学会のホー ムページ(http://molgen.biology.kyushu-u.ac.jp/usr/RNA/)に掲載されており、また誌面も限られていることから、ここでは各セッションの 演題のいくつかをトピック的に紹介していくことにする。
 
セッション1:mRNA動態
 
年会最初のセッションは、カレントトピックスとして、大 腸菌の熱ショックシグマ因子(σ32)のmRNA内の2次構造が熱ショックを感知する温度センサーとして働くという興味深い 話題を提供した森田美代(奈良先端大)の発表から始まった。 σ32は熱ショック応答遺伝子の転写を活性化するために必須な転写調節因子であるが、このタンパク質をコードするmRNAの 特定の2次構造が高温状態で融解し、翻訳が活性化されσ32量 が増大することが熱ショック応答機構のひとつであるらしい。これに関連して、佐藤由美子(遺伝研)は通常の転写因子σ70 が高温で集合体を形成しRNAポリメラーゼから離れることが、 熱ショック転写因子σ32への切り替えに寄与することを示唆する知見を報告した。また、水本清久(北里大)は真核生物の mRNAのキャップ構造形成を触媒する酵素がCTDがリン酸化され たRNAポリメラーゼIIと相互作用し複合体を形成していることを報告したが、この知見は転写とRNAプロセシングがin vivoで互 いに協調したシステムを作っていることを示唆しており興味 深い。
 
セッション2:翻訳
 
宇野麻紀子(東大)はペプチド鎖解離因子RFのドメインC領 域がドメインD領域による終止コドン認識の正確性を決めているとの報告を行った。この報告は、ペプチド性アンチコドン の存在が示唆されtRNA擬態仮説が提唱されているRFの機能解明 に大きな手がかりを与えるであろう。鈴木勉(東大)はミトコンドリアrRNA上のタンパク質結合部位の短縮や欠落と、それ に対応するリボソームタンパク質の分子量の増加との間に強 い相関関係があることを報告した。この報告はRNAからタンパク質への機能委譲の可能性を示唆しており進化的に見て大変 興味深い。遠藤弥重太(愛媛大)は極めて効率の良いin vitro翻 訳系の開発に成功したことを報告した。小麦胚芽から内胚乳を完全に取り除くことによって作製した彼らの抽出液は、長 時間の反応にも活性を低下させず大量のタンパク質を合成す ることが可能であり、今後様々な研究に応用されるであろう。
 
セッション3:tRNA
 
tRNAの研究は、日本におけるRNA研究の歴史と共に歩んでき たと言っても過言ではなく、また、現在においても独創的な研究が世界に先駆けて行われている。tRNAアイデンティティー (tRNAのアミノ酸特異性決定)に関する研究もその一つであろ う。横山茂之(東大)は、膨大なデータをもとに高度好熱菌由来のバリルtRNA合成酵素の結晶構造解析によるtRNAアイデン ティティーの機構解析について報告した。また、安川武宏 (日医大)はミトコンドリア脳筋症への関与が推定される変異tRNAの解析について、花田孝雄(東大)は特殊な構造をもつ tRNAの翻訳活性について発表した。吉久徹(名大)は出芽酵母 のtRNA スプライシングに関与するendonucleaseが、核ではなくミトコンドリア外膜に局在していたという全く予想外の結果を報 告し、今後の研究の進展が期待された。
 
セッション4:Catalytic RNA/ selection
 
本セッションは、 リボザイムそのものに関する解析の発表 数よりも、ランダムな配列を持つRNAやペプタイドの集団中から活性型分子を選択する実験系が関与する研究発表数の方が 多い点に特色があった。渥美正太(京大)は大腸菌を用いたin vivo選択法によるグループIイントロンのセルフスプライシング反応を促進するペプタイドの選択について報告し、川崎広明 (工技院)はCDK阻害因子を選択マーカーに用いた動物細胞に おける活性型リボザイムの選択システムについて報告した。また、山本利香(筑波大)と木本路子(東大)は、それぞれ HIV TatやRaf-1に特異的に結合するRNA分子の選択と解析について 発表した。これらの選択技術によって得られた活性型分子は遺伝子治療などへの応用のみならず、発現解析などの基礎的 な研究分野にも活用可能であろう。
 
セッション5:スプライシング制御
 
mRNA前駆体のスプライシング反応は、大部分の遺伝子がイ ントロンをもつ真核生物においては遺伝子発現に必須な反応の一つである。カレント・トピックスとして話題提供を行っ た一色正之(奈良先端大)は、日本人が常日頃口にしている ジャポニカ米、インディカ米、モチ米の食味の違い(各々の米に含まれる澱粉中のアミロース含有量の違いによる)が、 顆粒結合型スターチ合成酵素遺伝子(waxy)のスプライシング 変異などの結果生じていることを示した。mRNA前駆体スプライシングの研究が我々に非常に身近な食生活にも深く関わっ ていることが明らかとなり、その反応機構の研究に長年携わっ ている筆者らにとって、ご飯を食べる毎に感慨を覚えそうな報告であった。竹島泰弘(神戸大)はDuchenne型筋ジストロフィー の治療を目的として、人為的なエキソンスキッピングの誘導 により機能的なジストロフィン蛋白を発現させるモデル系ついて報告した。一方、遠藤仁司(自治医大)はキナーゼ阻害 剤によるSF2/ASFの核内分布変化について、広瀬豊(金沢大)は、 最近注目されているRNAポリメラーゼIIの最大サブユニットC-末端領域(CTD)のリン酸化が、mRNA前駆体スプライシングに与え る影響について発表した。転写、mRNAプロセシング、さらに はmRNA核外輸送を統合的に制御する核内分子機構の研究が、興味深い局面を迎えつつあることを感じさせた。
 
セッション6:輸送・局在
 
mRNAと蛋白質の核・細胞質間輸送に関する研究は、近年急 速に発展した世界的にみて非常に競争の激しい分野の一つであろう。塩見美喜子(徳島大)は、hnRNP A1の核内外への輸送 機構およびmRNA核外輸送との関連性について報告した。 Ran-GTPaseサイクルと輸送との複雑な関係など非常にわかりやすく丁寧な発表で好評であった。大石貴之(筑波大)はRNA helicase Aの核移行、井上浩一(東京医歯大)はNpl3pの核外輸送に ついて発表した。渡辺嘉典(東大)は減数分裂への分化誘導因子である分裂酵母RNA結合蛋白質Mei2の核外輸送機構につい て解析し、核・細胞質間輸送の制御が細胞内反応の進行に極 めて重要な役割を担っていることを示す良い例をまた一つ明らかにした。また、多比良和誠(筑波大)はtRNA核外輸送のリ ボザイムへの応用とその分子機構の生物種特異性に関する報 告をした。これらの優れた研究が日本において今後益々進展することを期待したい。
 
セッション7、8:発生・分化とRNA
 
セッション7と8では、様々な生物の発生・分化に関与する RNA結合蛋白質やRNAプロセシング因子、あるいは非コードRNAに関する報告があいつぎ、RNAと高次生命現象の密接な関係が 見てとれた。前半のセッションでは、中村輝(筑波大)がショ ウジョウバエの卵形成過程においてMe31Bと呼ばれるRNAヘリカーゼ様蛋白質が、母性因子の細胞内輸送に関ると予想されてい るsponge bodyと呼ばれる細胞内構造に局在することを報告した。 矢野環(大阪母子保健)はショウジョウバエの腹部及び生殖細胞形成に必須なoskar遺伝子のmRNAが、局在依存的に翻訳制御 を受けていることを示唆する知見を報告した。これらの報告 は、ショウジョウバエの系がmRNAの局在と翻訳の制御による発生・分化の制御機構を解明するための有効な系であること を再認識させるものであった。生殖細胞の発生・分化に関連 した興味深い報告として、白石英秋(京大)は生殖細胞分裂の開始時期に特異的に高発現する非コードRNAがボルボックス に存在することを、前川真吾(奈良先端大)はゼブラフィッ シュのRNA結合蛋白質DAZ-likeが始原生殖細胞の接着性あるいは移動能の制御に関与することを報告した。後半のセッション では、塩見春彦(徳島大)がKHモチーフをもつRNA結合蛋白質 をコードし、ヒトの脆弱X症候群の原因遺伝子であるFMR1やその類似遺伝子の機能について報告した。村田武英(理研)は ショウジョウバエのポリ(A)ポリメラーゼをコードするhiiragi遺伝 子がNotchシグナルによって誘導される翅縁特異的遺伝子の発現過程に関与することを報告した。木村友美(東京医歯大)は dsRNAによる遺伝子発現抑制実験から、スプライシング因子SR 蛋白質を特異的にリン酸化する酵素SRPKが線虫C. elegansの生殖 巣の形成過程に密接に関与することを報告した。
 
セッション9:神経分化・機能とRNA
 
このセッションでは、カレントトピックスとして秋山康子 (京大)がショウジョウバエ神経芽細胞から非対称分裂を経てグリア細胞と神経細胞が生じる分子機構について話題を提 供した。グリア細胞の運命を決定する因子であるgcm遺伝子の mRNAが将来グリア細胞になるべき細胞に局在することから、今後このgcm mRNAの局在に関与するRNA結合蛋白質の解析が重 要となるであろう。また、勝部憲一(東京医歯大)は最近同 定された微小管結合蛋白質Nau/STOPのmRNAの3'非翻訳領域内の配列に結合する因子が神経突起伸長の制御に関与することを示 唆する知見を報告した。さらに笠嶋克巳(神戸大)は培養細 胞を用いた実験から、神経特異的RNA結合蛋白質Huが神経細胞の分化に重要な役割を果たしていること、この機能にHu蛋白 質の核細胞質間シャトリングが必要であることを示唆する知 見を報告した。これに関連して、赤松和土(阪大)はマウス胚を用いた実験から、中枢及び末梢神経系でHu蛋白質が神経 細胞の分化を正に制御する因子であることを示唆する知見を 報告した。これらの報告は神経細胞分化過程におけるRNA結合蛋白質の重要性を示すもので、今後の展開が注目されるも のであった。
 
全体を通して見てみると、誌面では紹介しきれなかったも のも含めて、このRNAミーティングでは国際的に見てもきわめ て高いレベルの研究報告が多数あったと思う。学会としてはまだ産声をあげたばかりで規模としても比較的小さな日本RNA 学会の年会であったが、様々な観点からRNA研究に関心を持っ た研究者の研究発表と交流、そして次代を担う若手研究者の育成を進めながら高い質をもった独創的なRNA研究を育むとい う学会設立の趣旨に沿った大変活気あるミーティングであっ たと思う。日本RNA学会の主催で今後毎年開催されるRNAミーティングであるが、このミーティング発の研究成果が世界に 続々と発信され、日本のRNA研究がその質の高さと独創性で世 界を凌駕する日が近いことを充分に期待させる第1回RNAミーティングであった。
 
[転載を許可していただいた共立出版株式会社「蛋白質 核酸 酵素」編集部に感謝致します。]
 
 
  • 会期(開始) 1999年8月03日(火)
  • 会期(終了) 1999年8月05日(木)
  • 年会長 井上 丹(京都大学)、井上 邦夫(奈良先端科学技術大学院大学)