RNAエッセイ

COVID-19が猛威をふるったこの4ヶ月の間、私たちの生活は大きく様変わりしました。映像に映し出される世界各地の危機的な様子を見ながら、何度となく「こんなことが現実になるとは」とつぶやきました。こうした事態は、昔愛読した小松左京のSF小説『復活の日』の中でしか起こらないはずでした。そこに登場するMM88ウィルスは、イギリス陸軍が軍事目的に開発した新型ウィルスで、それを盗み出したスパイの飛行機がヨーロッパ山中に墜落し、雪解けとともにウィルスの蔓延が始まり、半年後には地球規模で人類は壊滅的な状況に陥るという設定でした。もちろん人造ウィルスや人類滅亡といった設定は、小説の中だけの話です。今回のCOVID-19、武漢で現れた奇妙なウィルス感染症は、私たちが注視している中、SF小説の中で起こっていたことが、そのまま現実の脅威へと変わっていきました。この広がり方がなんとも不気味で、日々確実に拡大を続け、それまで対岸の火事であったものが、気がつくと自分たちのすぐそばにまで刻々と迫ってきました。COVID-19は、人を選ばず全ての人に脅威を与え、受け手の健康状態、生活習慣、知識、深刻さ、そして運などの要因によって個人の運命が決定されていきました。こういう状態になって初めて、私たちの社会とは、無数の取捨選択の結果生じた微妙な平衡状態で、それがどれほど脆弱であるかを思い知らされました。進化の淘汰圧が、突然私たちの頭上に迫ってきたような初めて体験する緊迫感でした。

去年参加したRNA Society meeting (RNA 2019 meeting, Krakow, Poland) で面白い発表を見た。タコ (octopus) では例外的かつ異常とも思えるほどA-to-I RNA editingの頻度が高い (図1) [1]。「すごい!でもなんのため?」と衝撃を受けた。それ以来、タコに強い関心を持っている。そのうち、タコの研究をやりたい。編集者ADARをゲノム編集したタコを作製し、彼らの視線、表情 (ボディパターン、体色の変化) やヒトへの接し方を見てみたい。mRNAのMS解析をすれば、m6Aやm5C修飾もヤタラ出てくるかもしれない。それで、タコ関連の本を何冊か買った。しかし、読む時間がなかった。積読。いつか読もうと思い、果たせなかった。ところが、突然、COVID-19がやってきた。外出自粛 (日本人は、Jishukurin Aという脳に特異的に発現している短鎖ペプチドをコードする遺伝子のA-to-G変異のアリル頻度が異常に高く、それが日本人の権威に対する従順さにつながっている、との報告はまだない)、在宅勤務、オンライン会議、オンライン講義。突然、本を読む時間ができた。どうやらこのような状況を英語では“stolen time”と言うらしい。それで、タコに関する本や文献を幾つか読んでみた。

運良く理研にPIポジションを得ることができ、帰国してから早いもので4年が経ちます。日々、自分はPIとして研究室でどう振る舞うべきか、と思案しますし、「さっきの言動は良くなかったかな」、と研究室の帰り道、内省します。改めて痛感させられるのは、これまで自分が学生/ポスドクの間に一緒に研究をさせてもらったボスたちがなんと人間として素晴らしい人々だったか、ということです。僕自身は失敗・反省の日々なのですが (ラボのメンバーのみなさんすみません、ご容赦ください、、、)、なんとか少しでもimproveしようともがくところです。学会やセミナーなどのmeeting (もちろんCOVID-19以前の世の中での話なのですが) では、establishされたPIの方々と話をするチャンスがあって、「新米PIになにかアドバイスください」とみなさんに一言もらっていました。こういった一言が自分にとって金言だったのは言うまでもないのですが、これから研究室を持ちたいあるいは今まさに持とう、と考えいらっしゃるRNA学会員のみなさまにも一助なろうかと思いますので、それらの中で印象に残っている言葉の端々をここでご紹介したいと思います。ご本人には全く了承をもらっていませんし、僕が拡大解釈・事実誤認をしている可能性も大いにありますので、そのあたりは話半分に読んで頂くのが良いと思います、、、

本年度よりRNA学会の評議員として学会運営に初めてかかわらせていただくことになりました京都大学の齊藤と申します。私は2010年に独立し、かれこれ10年が経とうとしています。これまで、生命の起源からiPS細胞分野まで、いろんな分野に身をおいてきましたが、自分がどのように研究テーマを選んできたかについて少し述べたいと思います。日々研究に励み、これから自身の研究室を立ち上げていく学生さんや若手研究者の方々の参考に少しでもなれば幸いです。

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