RNAエッセイ

富山RNA倶楽部

井川善也(富山大学大学院理工学研究部)

早いもので大阪年会から2ヶ月以上過ぎ、あの酷暑も去って富山は朝夕には秋の気配が感じられます。大阪年会は20回という節目の年会でしたが、過去の年会の記録をたぐると、いわゆる「地方都市」での開催は、熊本(第6回)に始まり、弘前(第7回)、徳島(淡路島、第8回)、新潟(第11回)、松山(第15回)、そして昨年の富山(第19回)の6回のようです。年会長としてそれぞれの年会をお世話された先生の中には、その地から転任された方、大学を退職された方もおられますが、熊本から松山までの各地方での年会は、年会長のラボを筆頭に、それぞれの地方の大学発の「地元特産」とも言える個性的で優れたRNA研究の印象と結びついて、私の思い出となっています。

スプライシング発見40周年に際し 〜 スプライシング研究35年を振り返る(2)

前田 明(藤田医科大学・総合医科学研究所・遺伝子発現機構学研究部門)

第1回のエッセイを書いてから早1年である。実はその後会報が出るタイミングの度に、担当の北畠真さんから、寄稿を催促されたが、ひとえに忙しさにかまけてサボった結果であり申し訳ない。担当者も甲斐田大輔さんに代わり、先日の日本RNA学会年会 (大阪) で、さっそく彼から原稿を依頼され、いよいよ書かなければいけない状況に追い込まれた。幸いネタは盛りだくさんなので、例によって大脳皮質に鮮明に長期記憶された情報断片を引き出しながら、ありのままを如実に書き出した次第である。今回は、すべてアメリカでの研究生活の生きた体験であるから、昨今はさっぱり人気のない海外留学を考えている若い人たちへの、何かしら勇気づけられるメッセージになってくれたら嬉しい。一言で言うなら、アメリカは個性を認めチャンスをくれる国、ただしチャンスを生かせるかどうかは本人次第。おっと、これでは萎縮してしまうか。ではもう一言、アメリカは、てっぺんをめざすアメリカン・ドリームを夢みながら、そうならなくとも、多様な可能性を生かせ、リトル・ドリームを実現できる国、でもある。さあ、個性豊かな若い衆は、委細構わず、後先考えずにアメリカに行ってみることをお勧めする。何を隠そう、私がそうだったのだ。

嬉しい日本発のブレークスルー新薬

この連載エッセイシリーズの第4話で、インフルエンザウイルスの不思議なmRNA合成メカニズムと、それを発見したボブKrugについて紹介した。インフルエンザウイルス(時には、略してインフル)が感染細胞中でウイルスmRNAを作る時、宿主細胞のmRNAからキャップを含むオリゴヌクレオチドを切り取って、自分のmRNAの頭へ付けるという奇妙な現象を行う。その現象は、Cap snatching(キャップ拉致、あるいは、キャップ盗用)と呼ばれている。これはインフルの増殖に必要な、限られた反応なので、この反応を阻害する化合物は宿主細胞には影響の少ない理想的な抗ウイルス剤となることが期待されていた。

Cell誌の論文から 

1981年の3月、研究所のランチョンセミナーの順が廻ってきて、筆者は、話題提供のセミナーをすることになった。ロシュ分子生物学研究所は3つの研究部があり、それぞれが、1フロアを占めていて、各階には大きな図書室があり、セミナーはそこで行われる。聴衆はポスドクやラボチーフなど50人ほどで、ランチョンの時は皆がサンドイッチとコーヒを持って集まり、一時間ほどのセミナーを楽しむ。セミナーのタイトルや発表者は、2週間ほど前に張り出される研究所のカレンダー上で予告されていて、この昼の時間帯は、訪問者が来て話す場合もあるし、内部のものが話す場合もあるが、いつも活気があった。

RNAは未知の部分が多く、まだまだドラマが期待できる、興味の尽きない領域だ

DNAやタンパク質の品質管理 

「生体を構成する物質の品質管理」なんていうと、とても重苦しい。しかし、細胞にとっては非常に重要で、DNAやタンパクなどの品質を管理するシステムがあることはよく知られている。遺伝子DNAの修復は、最も重要で、修理方法もいくつかある。修理不能であれば、細胞ごと消去する。この操作がシッカリできてないと細胞は癌化したりする。タンパクの品質管理には、立体構造の崩れをチェックして、手直しするシャペロンというタンパクがある。シャペロンは、「不良品!」というタグをつける。タグはユビキチンという小さなタンパクだ。このタグが不良タンパク分子の外側に突き出ているリジンに付くと、細胞質内にあるプロテアソームという筒状のマシーンへ運ばれ分解される。かくして、古いタンパクは消失し、新しい分子に置き換えられる。