コロナ禍の中でRNA研究を盛り上げましょう!

投稿者 鈴木 勉(日本RNA学会会長)

COVID-19の感染拡⼤で、4月に緊急事態宣⾔が全国に発出され、私たちは2か⽉にもおよぶ⾃粛⽣活を余儀なくされました。⼀時は、全国の新規感染者数が⼀⽇で700⼈を超える⽇も経験しましたが、Stay homeが功を奏し、次第に感染者数が減少し、5月25日についに東京を含む⾸都圏の緊急事態宣⾔が解除されました。しばらくの間は予断を許さない状況が続きますが、ようやく⼈々の活動と活気が戻り、コロナと共に⽣きていくための新たな⼀歩を踏み出したような気持ちです。

「RNA 研究者としていま何ができるか?」という緊急メッセージを書かせていただきました。RNA研究者として、居ても⽴っても居られないと感じたからです。私たちが純粋な基礎研究を続けられるのは、健全な⼈類社会があるからであり、このような状況において、⾃分たちのプロジェクトは不要不急ではないか?と、私たちの研究観をも変えてしまうような、これまでに感じたことのないような感覚を覚えている⽅はたくさんいらっしゃるのではないかと思います。

様々な⽅からコメントやご意⾒をいただき、皆さんがそれぞれの⽴場でいま⾃分のできることを探していることがわかり、⼤変⼼強く感じています。増富健吉さん (国⽴がんセンター) は、PCR 検査のスループットが上がらない現状を改善したいと、⾃ら進んで学術的検証研究をはじめておられます (関連記事)。私たちも、少しでも貢献できればと、厳戒態勢の中で、4月末からポスドクとスタッフだけでコロナ対策研究をスタートさせました。コロナウイルスはRNAウイルスです、そのゲノムの約2/3の領域に、RNA依存RNAポリメラーゼ (RdRp) をはじめ、RNAヘリケース、RNAメチル化酵素、RNA結合タンパク質、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼなど、RNAゲノムの複製やプロセシングに関わるものがコードされています。現状で、レムデシビルやアビガンのようなRdRpの阻害薬が有望な治療薬として期待されていますが、十分な効果が認められているわけではなく、過度の期待は禁物だと思います。今後の長引く戦いに備えて、治療薬の開発には多角的なアプローチが必要です。RNAの基礎研究が、感染症対策に貢献することは疑いの余地がありません。今後、国も感染症対策の基盤研究をサポートするしくみを続々と打ち出してくると思います。おそらく皆さんもそれぞれの環境で独⾃の取り組みを⾏っていらっしゃるかと思います。ぜひこのホームページ上で情報発信をお願いできたらと思います。

本学会の名誉会員でいらっしゃる古市泰宏さんには、新型コロナウイルスを題材に⼤変読み応えのあるエッセイを三つも書いていただきました (<走馬灯の逆廻しエッセイ> 第25話第26話第27話)。いつものように、軽快な⽂体でわかりやすい⽐喩を盛り込みながら、専⾨外の⽅にも楽しめる内容になっています。RNA研究者だけでなく、これからコロナ対策に取り組もうとする多くの学⽣や研究者にとって役に⽴つエッセイですので、ぜひ皆様の周りの⽅々にも勧めていただきたいと思います。古市さんにはこの場を借りてお礼を申し上げたいと思います。また、本会報には、西倉和子さん (関連記事) と前田明さん (関連記事) にもエッセイを書いていただいています。若かりし頃のポスドク時代の思い出話や、海外のラボの研究に対する考え方などは、たいへん読みごたえがあります。これから海外でのポスドクを考えている学生さんには、大いに参考になるでしょう。

この⾃粛期間中に、会議や講義のオンライン化が進み、学⽣も教員も次第にこの環境に慣れつつあります。むしろ、対⾯式よりもオンラインの⽅が効率的でメリットが⼤きいという声も聞きます。研究交流や学会がすべてオンラインになってしまうのもどうかとは思います。Zoomで飲み会を開いても、なんだか味気ないですよね。やはり、その土地の雰囲気を感じながら、仲間と熱く語り合ったり、時には羽目を外したりすることも、つくづく重要なのだと実感しています。

今は、コロナ禍だからできるメリットをむしろ積極的に活⽤すべきかもしれません。そういう意味において、RNA2020のオンライン開催は、大変楽しませていただきました。RNA societyの主催者の努力に感謝したいと思います。私のラボでも、メンバーそれぞれが自分の興味のある演題を視聴して、Slack上で報告したり、ディスカッションしたりと、それなりに盛り上がりました。ぜひ、私たちもオンラインで研究交流する場を作っていきたいと思います。ぜひこういうことをやりたいと、会員の皆さんからアイデアをお寄せください。もちろん費⽤のサポートも検討します。いまこそ、RNA研究を盛り上げましょう!