アジア結晶学会はタンパク質の結晶のみではなく、結晶学という広い括りの成果の交換を行う交流会であり、今年はインドのコルカタという都市で行われました。インドといえば、優秀な科学者を数多く輩出していることで有名かと思われます。ラマン効果の発見者である、Ramanなどが有名でしょうか。近年話題になったものと言えば、2009年にリボソームの構造解析でノーベル化学賞を受賞した、Ramakrishnanもインドの出身ですね。そういった、科学の発展に縁のある地である一方で、インドは発展途上の国であり、生活環境は劣悪、外国人観光客はトラブルを経験せずには帰れない、といったマイナスイメージも持たれている方も多いのではないでしょうか。私もその例に漏れず、インドと聞けばネガティブな感情がまず頭に浮かんでしまっていました。初めての海外の一人旅にもかかわらずそんな場所に行くのかと考えると、不安と緊張で一杯だったのを覚えています。さて、実際のインドはどうだったかというと、そんな予想を裏切ることは無く、思った以上にカオスな空間が待ち構えていたのでした。最も印象に残ったのは、やはり街の汚さでしょうか。廃墟と乞食と動物に囲まれた町並みは、日本の暮らしに慣れている人間には少々ハードルが高いように思われます。その一方で、食事はおいしかったし(観光客向けのレストランですが)、中心街に広がるバザーなどは活気があって買い物を楽しむことができるという一面もありました。今後もう一度訪れることがあれば、お店の人に値段の交渉を挑んだりもしてみたいものです。ちなみに、タクシーの運ちゃんに運賃をボッタくられる、乞食に囲まれる、詐欺師に声をかけられる、といった典型的なイベントは問題なく味わうことができました。油断のならない国です。インド。
さて、学会発表はというと、私はポスター発表での参加となりました。個人的に心配だったのは、始めての国際学会での発表でしたので、やはり英語での発表が伝わるかという点でしょうか。ここ数年間で腐りきった自分の英語力(特に話すという点において)ではまともに伝わらず、グダグダになるだろうなぁと思っていたのですが、意を決して発表を始めると、意外とすんなり説明ができたのが驚きでした。やはり、自分の専門分野ではよく使われる表現というのが染み付いているので、何気ない日常会話よりもむしろ楽に話せるのではないでしょうか。ポスター発表という楽な形式だったのもあるのでしょうが。質疑応答ではやはり聞き返す場面も多かったのですが、最終的に理解してもらうことができたのではないかと思います。普段使わない英語での発表で、日本語が伝わらない人にも自分の研究を伝えられるということは単純に嬉しく、また刺激的な経験となりました。そして、さらに嬉しいことに、アジア結晶学会においてもポスター賞を受賞させて頂くことができました。自分の研究結果の価値が認められるという、何にも代えがたい喜びを得ることが出来、一人で始めての国際学会でも恐れず飛び込んでみてよかったとしみじみと思うことができました。
最後に、青葉賞受賞、及び海外学会参加のご支援に関して、重ねて感謝を申し上げたいと思います。青葉賞が無ければ、このような貴重な経験は得ることはなかったのではないかと思います。また、拙い文章にも関わらず、ここまで読んでくださった皆様にも感謝を申し上げたいと思います。
写真1:野犬。インドで遭遇する動物の代表例。そこら中に溢れている。
写真2:猿もいた。
写真3:学会会場のScience City