5月に入って、新型コロナウイルスの感染爆発は終わった。世界では、まだ、いくつかの国で、爆発が続いているが、日本では、強制的な法指令がなくても、この難局を超えることができたのは、国民の底力である。しかし、これから、コロナの終息までの道のりは遠く、長距離レースとなろう。人口の6~7割がワクチン接種により、あるいは、―――重症化を避けつつーーーウイルスに感染して、免疫力を得ない限り、ウイルスをこの国から除去することはできない。いや、そのあとであっても、ウイルス保因者が外国から入ってくることを想定すると、免疫を持たない3割以上の人たちの誰にも、ウイルス感染と重症化への恐怖は依然として消えないしーーー特に、筆者のような高齢者には、とても怖しい。
古代に思いを馳せさせるエンデミック
パンデミックのローカルなものを、エンデミック (Endemic) という。本邦の最も古い歴史書である日本書紀には、3世紀後半に、伝染病が流行り、人口の半分が亡くなったという記述がある。これは日本国のことだけだからエンデミックというべき事象だろう。しかし、16世紀中頃に、ペルーのインカ帝国とメキシコのアステカ帝国が、ピサロやコルテスに率いられた少数のスペイン兵士によって滅亡させられたのは、武力というよりは、紛れ込んでいた天然痘ウイルス保因者がいたためであったとされる。彼らが持ち込んだウイルスが南アメリカの国々へ広がり、免疫力のない現地人や王族を死に至らしめたからであり、二つの帝国は武力というよりはエンデミックウイルス感染により滅亡したと言われている。大勢のスペイン兵士は、すでにウイルスの抗体を持っていたから、なんということもなかったのである。
日本書紀に記載された突然の大病災も、その当時、渡来人が持ち込んだものであろうと筆者は想像しているが、そんな原因を知らない我々のご先祖様の恐怖は、いかばかりであったろうかーーー素朴に (神がお怒りになった――) と思うしか「なかった」であろう。神を社に祀り、祈りの前に、清水で口を漱いで、手を洗ってから神前に進むなどの、その後の、日本人の衛生作法は、その辺から来ているのかもしれない。そして、その文化が今回のパンデミックの中でも、日本の感染率や死亡率を抑えているのではないかと思う。
さて、現在のコロナパンデミックであるが、我々は毎日報じられるウイルス情報から、この厄災の正体を充分に知っている。しかし、免疫力を付ける「期待のワクチン」がまだできないことは、古代の先祖やアステカ人と同じである―――では、どうすればよいのだろうか?
第25話で、コロナウイルスの分子生物学について書いたので、この稿では、コロナウイルスの増殖を抑えたり、ウイルス病の重症化を緩和する医薬品候補について述べる。それらの医薬品を使うために必要なことは、まずウイルス感染の確認である。それは、PCRと抗原検出で行われる。これまでは、ウイルス遺伝子を検出するのはPCR一本であったが、ようやくウイルス蛋白 (多分ウイルス表面に突き出ているSタンパク) を検出するモノクローン抗体ができて、抗原検出ができるようになったのであろう―――これは、まことに心強い。
PCRについて
<脱線>
30年前のことであるが、ロシュの研究開発の最高責任者のドレーブス博士が来日して私に尋ねた。
「ヒロ、米国のシータスという小さな会社から、PCRというDNA増幅の技術を提案されているが、お前どう思う?」「数分子の微量のDNAも増幅して検出できるそうだ」
「彼らは、この技術の値段を、$200Million (当時約250億円) と言っているが、どうだろう?」。
ドレーブスは私の直接のボスだ。度胸がいい。私は、値段の大きさに驚いたが、PCR技術には驚かなかったーーー似たような反応は、当時、誰もが考えていたからだ。ただ、熱耐性・温泉菌から抽出した熱耐性のポリメラーゼを使うというアイデアには魅了された。そして言った「Let’s buy it」。
これらのことについては、エッセイシリーズの第9話「数兆円の経済効果―――PCRの発見」ですでに書いている。それから20年間、PCR技術は、ロシュのものとして、HIV (エイズウイルス) やHCV (C型肝炎ウイルス) 検出のための検査技術として大活躍した。ロシュは、PCRが学術研究に使われることには一切権利を主張しなかったし、この技術を大いに喧伝したから、PCRは急速に有名になり、アカデミアでは広く使われ、このため世界の遺伝子研究は大いに進んだ。
欧米はSteinmetz博士が、日本では筆者が、PCR について講演会で話したり、研究会の座長となることで、ロシュはこの技術を大いに喧伝した。多分、日本は、いまでもアジアで最大のPCR普及国である。実験室のどこへいってもpHメーターがあるように、PCRをみることができる。コロナウイルスの検出にPCR技術を使うことが「立ち遅れた」ということで、国会でもテレビのバラエティー番組でも、PCRの中身を知らないマスコミや国会議員が、PCRを連呼し、政府や感染症研究所を突き上げる人気論点になっているが、今やPCRは「泣く子も黙る」―――国を救う重要技術である。ところでPCR技術は、あまりに敏感なので、空中に浮かぶウイルスさえもコンタミすれば感知する。扱いも、難しい技術であり、PCR技術者を一朝一夕に増やすのは易しいことではないーーーしかし、RNA学会、生化学会、癌学会、薬学会、獣医学会の研究者であれば、PCRが使える。これらの皆さんが「協力しようと」立ち上がれば「あっという間に」数十万検体/日が処理できる底力が日本にはあるのである。法の縛りや、保証や、安全性などの問題があるとは思うが、それを取り払えばすぐにも解決できる底力がこの国にはある。
さて、PCRや抗原検査により、恐れていたウイルス感染が判ったらどうすればよいのだろうか?コロナウイルスに特化したワクチンや抗ウイルス新薬は、残念ながら、まだない。そこで、すでに臨床で使われている医薬品の中に、いくらかでもウイルスの増殖を抑える化合物があれば、それを使うべきである。それらの薬はコロナに特化したものではないが、―――安全性が許す限りーーー転用して使い、ウイルスの増殖と他臓器への進展をいくらかでも「抑えてくれればよい」のである。
もともと「薬だけでウイルス全部を殺すことは絶対できない」のであり、ウイルスの増殖を抑えつつ、身体が持つImmunology (免疫) の力が、体内に抗体を作り、ウイルスを捉えて駆除してくれるまでの時間を稼ぐのである。それについては前稿の第25話で述べたが、この稿では、老生が知る幾つかの転用して使える医薬品について紹介したい。
コロナウイルスの抑制に使えそうな医薬品
抗ウイルス薬の標的
コロナウイルスの増殖に必要なプロセスについて前稿第25話で述べたが、それらはすべて、抗ウイルス薬が攻撃すべき標的となる。順序から言えば、
(i) ウイルスが細胞表面の受容体に結合して、細胞内へ入り、そのゲノムRNAがメッセンジャーRNA (mRNA) として働き、タンパク質をつくる。そのうちの一つのポリプロテインをプロテアーゼが適切にカットする。プロテアーゼにはウイルス固有のものがあると思われる。
(ii) そこで作られるウイルスタンパク質の一つであるRNAポリメラーゼは、ウイルスmRNAを作り、次にはウイルス遺伝子であるゲノムRNAをつくる。なんと、中国から論文で、コロナウイルスのポリメラーゼの結晶構造が、早々と、5月15日号のScience 誌に出ている137。
(iii) そのあと、ゲノムRNAとNタンパクが結合しーーー“パッケージング”とも表現されるプロセスで―――ゲノムRNAがウイルスの粒子の中へ取り込まれ、子ウイルスができる。
(iv) 子ウイルスは、細胞の内側の膜へとりつき、そこにある細胞膜をかぶって細胞から飛び出す。これらの一連の反応プロセスは約1日間で終了する。
(v) ウイルスの複製が完了するころ、細胞は死に至り、各種免疫細胞が集まってきて、種々のサイトカインを放出するため、ローカルな炎症反応が起こる。このような炎症が慢性化して拡大すると「ボヤが大火災となり」サイトカインストームと呼ばれる全身性の致死的な炎症を引き起こす。
このようにして、おおよそ数百個の新ウイルスが生まれ、新しい細胞へ (まずは近辺の細胞へ) とりつき、増殖サイクルを繰り返すことになる。ウイルスに取りつかれた細胞は、Shut-Offという現象で自身の働きを止めさせられ、再生機能をウイルスに「乗っ取られてしまい」―――ついには、子ウイルスの生産に寄与した後、死に至るのである。
毎年冬になると襲ってくるインフルエンザウイルスでは、抗ウイルス薬の研究が進み、ゾフルーザやタミフルという優れた治療薬が生まれた (このエッセイシリーズでは第4話と第12話で紹介した)。それらは、(ii) のmRNAを作るところを抑えたり (ゾフルーザ)、(iv) のパッケージングと飛び出しを抑えたりする (タミフル) 優秀なウイルス治療薬であるが、この二つの薬は、残念なことに、今回のコロナウイルスには全く効かない。米国NIHでは、コロナウイルスの増殖を抑える化合物の募集をやっているので、心あたりの方は応じられると良い。
新型コロナウイルス治療薬候補について
レムデシビル (Remdesivir)
米国のギリアド社によって開発された抗ウイルス薬で、米国で迅速承認され、日本でも先日新型コロナウイルスの初の治療薬として承認された。すでに、エボラ出血熱ウイルスなどで実績がある。化合物の構造からみると核酸ヌクレオチドアナログ (類似体) だから、(ii) のステップで、RNAポリメラーゼを阻害するメカニズム (多分Chain termination阻害) だろうと思われる。実際中国からの論文では、レムデシビルがポリメラーゼと複合体を作るモデルを示している。この化合物はいろんなウイルスに効くということになっているが、それは、とりもなおさずーーー効き方が甘く、副作用も多いーーーということにつながるかもしれない。しかし、この際贅沢は言えない。点滴による直接投与であり、日本への輸出量は少ないだろうという意地悪な予想もあるので、重症化した患者への投与に限られるかもしれない。腎不全などの副作用を起こす頻度が高いため、発症初期の患者さんに処方される薬とはならなくて、「人工呼吸器の装着が必要な重症患者」などに限って使用されることになろう。
イベルメクチン(Ivermectin)
北里研究所の大村智先生が川奈のゴルフ場の土壌から採取した放線菌が作る抗生物質であり、40年ほど前に米国メルク社が腸管糞線虫症疥癬や毛包虫症に対して経口投与できる治療薬として開発した。以来、3億人以上の患者へ、特段の副作用もなく適応され、アフリカ諸国など裸足経由で感染する皮膚病の特効薬として広く使われてきた。この貢献により、大村先生はノーベル賞を授賞された。この薬、イベルメクチンの特許は20年前に切れているが、COVID-19ウイルスに対する効果について衝撃的な論文が、先月4月3日、オーストラリアのロイヤルメルボルン病院・感染症研究所から発信された。実験的に、細胞へウイルスを感染させ、そこへ、イベルメクチンを加えるとウイルスの増殖が、~2 μMほどの低濃度で抑えられるのである。作用機序といってーーー何故効くのかについて考証するとーーー細胞の核へウイルスタンパク質を運ぶImportinの作用を抑えるからだろうーーーとする仮説が提唱されているが、確たる証拠はない。もしこの仮説が正しいとすると、新型コロナウイルスは、これまで細胞質ウイルスと思われていたのだが、核内での反応もあることになり、ウイルス学のビッグニュースとなる。別の仮説もある。イベルメクチンはウイルスが必要とするプロテアーゼの働きを阻害しているという可能性である。この後で紹介するアビガンに比べて、服用量が桁違いに小量で済み (経口で約20 mg/日)、安全性も40年間の実績と3億人の臨床実績があるので、大いに期待したい。現在は、米国ユタ大学や北里大学で臨床試験が行われていると聞くが、重症化した患者の死亡率が3分の1になったそうである。投薬のタイミングが、ウイルス感染の初期でも後期でもよいのであれば、誠に心強い救世主となろう。
図1.イベルメクチンの化学構造 (上:イベルメクチンB1a、下:イベルメクチンB1b)
アビガン(Avigan)
日本で発明された「期待の抗コロナウイルス薬」であるが、老生は楽観視していない。2017年のRNA学会は富山市で開かれ、その初日の招待講演で、アビガンの開発に貢献された富山大学医学部の白木公康教授によるお話があったことを覚えていられる諸兄は多いと思う。ちなみに、老生は二日目の招待講演でキャップの話をさせて頂いたのだが、覚えていられるだろうか?
医薬品には幸運な星のもとに生まれ、順調に開発が進み、予定どおりの活躍を果たす化合物と、―――そうではなくて、「苦難の道を辿る」化合物とがある。このエッセイシリーズの第11話で紹介した肺高血圧症の薬ボセンタンなどは幸運の薬であり、それに比べると、アビガンは多分に不幸な生い立ちを背負っているようだ。アビガンは、以前はT705と呼ばれていて、構造式をみると判るように、有名な抗がん剤5-FU (5-フルオロウラシル) に似ている。5-FUは副作用が強いことからーーーT705は副作用の少ない5-FUアナログを目指して1990年代に作られたものと思われる (図2)。
図2.アビガン (左) とゼローダ (右) の化学構造
しかし、T705は、同じころ、同様に5-FUの後継者を目指したゼローダ (Xeloda) にいろんな面で負けてしまった感がある (図2)。ゼローダは、鎌倉のロシュ研究所で創生されたので、筆者の良く知るところであるが、その後、米国ロシュで開発され、現在も世界の市場で胃がん、大腸がん、乳がんなどへ重要な抗がん剤として活躍している。さて、これら両方の化合物は経口投与されると (共に投与量約3 g/日と多い)、体内で代謝され最終的には5-FUのトリ・リン酸となり、―――がん細胞のDNA依存RNAポリメラーゼを阻害するというーーー作用機序を示す。この性質から、T705は2010年代に入り、アビガンの名で、インフルエンザウイルスのRNA依存RNAポリメラーゼ (RdRp) を阻害する化合物として、カムバックするのである。アビガンには、しかし、残念なことがある。それは、初期胚への致死性や胎児への催奇形性があることが判ったからである。そのような危険な副作用のため、アビガンは抗インフル薬として承認されたものの、エボラ出血ウイルスのような危険なウイルスが跳梁した場合、―――他に代替薬がない限りにのみーーー使われる備蓄薬として”お蔵入り“になってしまった。
巷では、マスコミが「アビガンを出せ」と喧しいようであるが、老生は、他に代替できる抗ウイルス薬があれば、アビガンには「抜かずの伝家の刀」でいてほしいと思うのである。この判断の裏にはもう一つ理由がある。それは、アビガンの化学構造が余りにシンプルで、密造されやすいのではないかと案じるからである。合成に必要な原料も比較的入手しやすいので、密造されて、違法グループの手に渡り、ーーー野放図に使われることが無いようにーーーしなければならない。
アルビドール (Arbidol)
ロシア生まれで、化学構造の中心にインドール核を持つ分子量400ダルトンほどの化合物であり、インフルエンザウイルスA型やB型、あるいはC型肝炎ウイルスの増殖抑制に効果があったとされている。作用機序はウイルスが細胞表面に吸着し、細胞内へ入る (i) のステップを阻害すると思われている。多分、プーチン大統領はこの化合物の抗コロナウイルス活性を検索せよと号令しているのではないだろうか。漢方薬の中で、SARSウイルスやMERSウイルスが流行した時に中国の人達が好んで使ったとされる煎じ薬の成分をみると、インドール核を持つ化合物が含まれているので、案外、「中国3千年の知恵」がそこに活きているのかもしれない。
クロロキン、ヒドロキシクロロキン、クロロキンリン酸
トランプ大統領が期待しているとされる、抗マラリア薬の抗コロナ薬への転用である。中国のいくつかの地域で臨床試験を行った結果、効果が証明され、中国内の指定薬品になったとのことである。クロロキンは1934年以来の長い歴史を持ち、安全性は担保できる。抗ウイルス作用に加えて、炎症性サイトカインの産生を抑えることがわかっているので感染中期以降で中等症状の場合に服用するのが良いと思われる。作用機序など、はっきりしない不思議な薬である。もとはと言えば、マラリアからの被害を避けるために使われたキナの樹皮からの抽出液であり、そこに含まれたマラリア特効薬キニーネに源流を発する薬である。
図3.ヒドロキシクロロキンの化学構造
トランプ大統領が押している理由は、1934年にドイツが合成したものの実用化を断念したこの薬が、1943年に米国が独自に開発し、実用化に成功したという歴史があるからだろう。世界的なパンデミックに対して、自国産の医薬品が活躍して「世界を救う」という美談に酔いたいという政治家の気持ちは判るが、「安全性と効果」こそが重要である。
フサン(ナファモスタットメシル酸塩:Nafamostat Mesilate)
コロナウイルスが細胞へ侵入する際に、またその次には、細胞内でウイルスmRNAが翻訳される際に、大きなポリプロテインが作られて、それがプロテアーゼにより適宜カットされる (i) のステップがある。このステップはウイルスにとって必須なので、プロテアーゼを阻害する化合物は、新型コロナウイルスの増殖を抑えるのではないかという観点から、プロテアーゼ阻害剤が、既存薬の中から細胞レベルで見つけられた。それが、膵炎の薬として知られるフサン・ナファモスタットであり、東大医科学研究所で見つけられ、テレビニュースで話題になった。続いて韓国でも、同様の発見があり、特許を申請したなどとのニュースがまだネットにある。実際、エイズウイルスの増殖を抑える素晴らしいプロテアーゼ阻害剤・抗ウイルス薬が、これまでにいくつも開発されて、エイズ患者のQOLを向上している薬の歴史がある。作用機序が (i) のステップを抑えるプロテアーゼ阻害剤であるから、投与は感染初期から後期に至るどこでもよいと思われる。フサンは注射薬であるが、一回の投与が50 mgと少量であるから、副作用には問題なかろう。
アクテムラ (抗体医薬による、サイトカインストームなど高度炎症の鎮静化)
最先端のバイオテクノロジー技術によって国内で製造された抗体医薬 (中外製薬) であり、インターロイキン6というサイトカインの働きを抑える。市場に出てから10年間以上の実績がある。コロナウイルスの増殖を抑えることはないが、重症化した患者の炎症を抑えて、死亡の原因となるサイトカインストームをコントロールして、多臓器疾患の原因を除き、闘病生活を緩和するという重要な働きを行う。(v) のステップを抑える重要な役割を果たすと思われる。抗ウイルス薬とのコンビネーションにより、「コロナウイルスの感染も怖くない」と思わせる日本発の期待の医薬品であり、臨床試験の結果を待ちたい。
オルベスコ (吸入ステロイドによる抗ウイルス効果と炎症の鎮静化)
オルベスコは喘息治療に広く用いられている吸入ステロイド薬で、新型コロナウイルスに対しても強い抗ウイルス活性を持つことが国立感染症研究所の研究から明らかになり、2月19日に行われた「新型コロナウイルス感染症への対応に関する緊急拡大対策会議」で報告された。オルベスコの抗ウイルス作用のメカニズムは不明だが、ステロイドによる抗炎症作用と二つの作用、(ii)と (v) をカバーする性質を具備しているのは珍しく、とても貴重である。感染の初期や中期にインヘイラー (吸入器) による治療が勧められる。特に、肺炎症状が進行して生じる血中酸素欠乏症状などにたいして良いのではないかと想定する。
プロテアーゼ阻害剤ネルフィナビル
ネルフィナビルは、抗レトロウイルス効果を持つプロテアーゼ阻害薬の一つであり、経口投与することができる。30年前、世界的な脅威となったHIV (エイズ免疫不全症ウイルス) を抑えるために世界の製薬会社は競ってHIVのポリプロテインを切断するHIVプロテアーゼに対する医薬品を創出した。ポリプロテインを切断する際に生じるの反応中間体 (加水分解の遷移状態) の構造をもつ種々の化合物がコンピューター上にデザインして作られている138。それらは総じて特異性が大きく、―――長期間の使用を覚悟して選ばれているのでーーー低濃度で効果がある。それらの阻害剤のうち、コロナウイルスのプロテアーゼの構造ポケットにはまる化合物がネルフィナビルである。ネルフィナビルは、ウイルスを使う細胞アッセイでもよく効いているので、抗ウイルス効果が期待できる。
抗ウイルスの王者インターフェロン (INF)
インターフェロンは、1954年に、伝染病研究所所長(当時)の長野泰一博士と小島保彦博士が「ウイルス干渉因子」として報告した抗ウイルスタンパクである。この蛋白は、体内に、超微量にしか存在しないために、1980年代までその正体は明らかではなかったが、米国ロシュ分子生物学研究所のSydney Pestka博士の研究室で、この当時留学していた前田秀一郎博士 (後の山梨大学・学長) らの活躍により、その遺伝子 (INF-α) が明らかになった。その結果、新生ジェネンテク社の遺伝子工学技術により、この遺伝子を使って大腸菌の中で大量に作られるようになった。インターフェロンには、α、β、γ、δなど4種類あるが抗ウイルス薬(注射薬) としては主にα、βが使われてきた。このように、IFNは日本人研究者が大きく関わってきた抗ウイルス医薬品であり、本邦で長らく大きな問題であった慢性肝炎ウイルスB型、C型の駆除には大活躍をした実績がある。他方、10年ほど前から、C型肝炎ウイルス駆除薬として、経口投与が可能な「ハーボニー」(米国ギリアド・サイエンス社) が登場して、C型肝炎治療に関してはIFNは使われなくなったが、B型肝炎ウイルスやその他のウイルスにはまだ使われている。日本では、武田薬品、日本ロシュ (中外製薬)、大日本住友製薬が、それぞれキャンフェロン、ロフェロン、スミフェロンという名の製品を臨床現場へ送り、大いに貢献した輝かしい歴史がある。天然のタンパク性抗ウイルス医薬であり、新型コロナウイルスの治療薬としてはベストポジションにある既存医薬品である。安全性や副作用や作用機序など全てがよくわかっている既存薬なのだが、何故か、マスコミで紹介されることがない。一体、どうしたことであろうか?筆者は、今一度、IFNが登場するのを期待している。。
BCG効果についての謎
新型コロナウイルスは世界中に蔓延しているが、疫学調査によると、不思議なことに幼児期に、BCGワクチンを投与された国では、コロナ感染者の死亡率が著しく低いことが報告されている。(BCGは、ウシ型結核菌 (Mycobacterium bovis) を培養して作った生ワクチンで、結核予防のために予防的に接種するに対するワクチンのことである)。
コロナウイルスの感染で死亡率が低い国は、日本、台湾、韓国、イラン、ポルトガルであり、これらの国ではBCGワクチンの接種が幼児に対して行われている。一方、ポルトガルの隣国スペインでは、BCG接種は行われてなく、ウイルス感染者の死亡率が著しく高い。BCGワクチンの接種を受けない国々は他にもある。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどの国々であり、これらの国では重症化したウイルス感染者の死亡率は、ひどく高い。
日本の抗ウイルス施策が、下手・遅いと、野党とマスコミが声をそろえて喧伝するにもかかわらず、データは見事である。日本の感染率は低く、死亡率は低いことを示している。老生は、訓練されたPCRの検査技術者の数が少ないなかを、日本の医療専門家チームは、概して、適切な判断を下して「よくやってきた」と評価している。しかし、海外からはーーーやっかみを含めてーーー「日本は理解できない、不思議な国だ」、「単に、ラッキーだったのだろう」、あるいは「東洋人は、そもそも、遺伝子が違うのではないか」という声さえ聞く。バカな話だ、そこにはサイエンス感覚がない。では、イランや、ポルトガルのデータをどう説明するのか?
老生はこの問題について考えてみて、そして、あるマウスの遺伝子、Mxについての記述を思い出した。
それは、1980年代に、スイスのチャールス・ワイスマンの研究室で、永田重一さんや谷口維紹さんが、インターフェロン (IFN) を発見した後、遺伝子工学的に作ったIFNを、マウスに注射してインフルエンザウイルスへの感受性について実験したときのデータである。
その時、ワイスマン先生はーーー実験に使ったマウスは、すべてIFN処理により、ウイルスに対して抵抗性になるのだがーーーある一群のマウスだけは、ごく微量のIFNの処理により抗ウイルス性になり、インフルエンザウイルスを感染しても「死なない」ことを見出したのであるーーーさすが、Charles Weissmannである。その後の、実験の結果から判ったことは、彼らが見つけた“マウスのX遺伝子、つまりMx遺伝子”が活性化していれば、少量のIFNによりマウス個体はウイルス感染に対して「重症化しない」ということであったと記憶している。興味ある方は、1986年のCell誌をご覧になると良い139。老生は、このデータからヒントをもらい、幼年期にBCG接種を受けると、ヒトのX遺伝子―――Hxと呼ぼうーーーが継続的 (constitutive) に活性化されていて、コロナウイルスの初期感染で少量のIFNが分泌されると、そのシグナルを受けて、その後のコロナウイルスの感染に対して、IFNによる挟撃体制がしっかりできるからではないかと想定している。つまり、BCGは、ウイルスセンサーであるHx遺伝子を恒常的を活性化する働きをしているのではないかと推理する。さて、Hxの正体を明らかにするのは興味があるが、多分、ワイスマン先生は、すでに、答えを知っていると思うのである。
あとがき
この稿の中で、抗プロテアーゼ薬について書いているとき、ふと、約30年前に、日本ロシュ (株) 研究所生物工学部門・部門長時代に「HIV治療薬の開発とタンパク工学」と題した単行本を苦労して書いたことを思い出した。当時、産官協力で創られた (株) タンパク工学研究所の所長をされていた (故) 池原森男先生を代表として出版した6冊の啓蒙本のうちの一冊が、私の担当だった (写真)。
他の5冊は、「抗体のタンパク工学」 (三木敬三郎)、「タンパク工学における遺伝子発現の調節」(三浦謹一郎)、「ペプチドとタンパク工学」(藤野政彦)、「発がんのタンパク工学」(西村 暹)、「たんぱく質立体構造の新しい視点」(森川耿右) だ。当時のタンパク工学の勃興の息吹の中で書かれた啓蒙書だった。現在、そのような本を出すとすればタイトルは何だろう―――「コロナパンデミックの科学」かな。
このエッセイは、これまで、過去に起こった発明・発見を主に、のんびり、書いてきたのだが、COVID-19パンデミックのために、そうもいかなくなった。「何か、お役にたつことが書ければ」―――と思い、前稿の第25話では「コロナの分子生物学」について書き、この第26話では「コロナ治療の薬学」について書くことになってしまった。ことのついでに、次は第27話で、「コロナ予防のワクチン」について、書いてみようかと思っている。
何か昔の記憶について、思い出して書いてみたいがー――この稿は、深夜に書いていて――バックに五木ひろしの歌を流している。――ああ、そうそう、――あれは、ずっと、昔のことだったが、――のちに、五木ひろしになる若者だと思うがーーーまだ無名で、でもプロ歌手志望で、「全日本歌謡選手権・オーディション」の最終決戦のために「埼玉へ向かう」と言う彼と、大阪発東海道線の深夜列車の最後尾デッキで出会った。ふたりだけだった。
私は家内の実家 (岡山) を訪ねたあとの、東京への戻り旅だった。彼は、列車から身を乗り出して、何曲も歌って練習していたが、終わってから、私達は少時、会話した。私は、博士課程を終わる寸前の学生で「これから遺伝子研究をやるんだ」と自己紹介したが、ーーー彼には遺伝子研究って、何か、分からなかったかもしれないーーーでも、なつかしい記憶だ。
遺伝子オタクと、歌謡曲オタクの珍しい出会いだった。二人の若者の、人生の糸が、そこでほんの一瞬、交差しただけのことだったのだが―――この記憶を、私は、とても大事にしている。この「走馬灯の逆回し」回顧録エッセイの最も深部の思い出の一つであるかもしれない。いまや、彼も70歳を超え、高齢期に入ったが、コロナには気を付けて、元気に歌い続けてもらいたいと思っている。(了)
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