一昨日、モスクワから戻りました。すでに5回目の訪問でしたが、初春(3月)は2回目。昨年も、ちょうど今頃モスクワでしたが、気候は今年の方が断然厳しく、最終日の最高気温はマイナス8度でした。路肩は雪の大山小山の連続。公園は一面の雪。手袋をしていても指先が痛く感じられましたが、ブランコを漕ぐ子供は満面の笑み、ハスキー犬はもっと大喜びで、まるでウサギのように雪の上を飛び跳ねていました。慣れとはおそろしいものです。いつだったか、先方からもらったメールに、先週まではマイナス30度だったけれど、マイナス20度になったから、スキーに行きたいのだけれど、wifeが許してくれない、というのがありました。彼は御歳83歳(写真参照)。モスクワは意外にも平坦で、よってノルディックですが、それにしてもスキーに行きたいとは、恐るべし、かな、よきかな。来年度も訪問予定ですが、秋が良いというので、その頃にしようかな、と思案しているところです。言葉はお互い流暢ではありません。が、それでも双方のpiRNA研究の進捗や技術を分かち合うのは楽しく、学生の発表のスキル向上にも繋がっています。
写真 右端がProf. Gvozdev。左はProf. Shevelyov(Prof. A.A. Aravin研究室の前にて)
RNAという物質は生命体内に散在し、全ての生命機能に携わります。その発現量や機能がバランスを崩すと生命体は異常(疾患)を引き起こし、また、その状態を元に戻すために創薬としてRNA分子を利用することも出来ます。日本RNA学会(RNAJ)が扱うトピックも、転写、RNAプロセシング、そして翻訳は勿論、RNA分解や細胞内局在、エピジェネティクス、疾患、そして創薬に至るまで幅広く、バラエティーに富んでいます。この事実は、RNA研究領域を比較的穏やかにする効果をもたらし(バッティンが少ないという意味において。昔、Ian MattajがRNAから他分野に移行しつつあった際に、まさにそのようなコメントをつぶやいていたのを、今でも憶えています)、また我々RNA研究者にとっても、近くて遠い研究分野を知るという意味において利益をもたらすものであることは言うまでもありません。が、RNAJそのものが“進化”しているかと問われると、100%否ではないかも知れませんが、その答えは、期待通りではない、というのが個人的な感想です。毎年、退会する人もいれば、新しく会員となる人もいます。これは、年中行事で、人という観点からすると、そこには確かに動きはあります。しかし、例えば年会に参加し、春の息吹のような新鮮さに触れる可能性や場がどれくらいあるのかと問われると、う〜んと考え込んでしまうのが現状のように思われます。酸素不足の原因となる温室効果ガスをとり払い、excitementやenthusiasmを送り込む偏西風を産み出すには何をすべきか。今、個人的には明確な答えをもち合わせていませんが、そろそろ学会が一丸となって、対策や方針を考えても良い時期なのかも知れないとおもう今日この頃です。
日本RNA学会(RNAJ)の会長としての4年間(2年 x 2期)の任期も、そろそろ終わりを告げようとしています。「ジャネーの法則」ではないですが、この歳になると、本当に、4年なんて体感的には数ヶ月くらいにしか思えず、来し方をゆっくり振り返ってみても、私が会長として成し得たことといえば、RNA2016のお世話くらいしか思い出されません。RNAJのために特別な力を発揮しえた会長ではありませんでしたが、歴代のRNAJ会長は、志村先生からはじまり男性のみが就任されていましたので、第8期に来てようやく女性会員がなり得たことは、それなりに意義があったのではないかと思ったりしています。とはいえ、ここまで平穏無事に来られたのも、相馬庶務幹事、杉浦・矢野会計幹事、そして北畠編集幹事の、絶大なる、心温かい気配りに溢れたご支援(それは彼らからのメールの数に反映されています)があったからであるという事実を、これを機に会員の方達と共有させていただきたく思います。本当に有難うございました。また、理事の皆様、並びに集会幹事をつとめてくださったRNA2014〜2017の年会長の皆様に、この場を借りて深く御礼申し上げます。
平成30年3月吉日