東京大学 新領域創成科学研究科 メディカル情報生命専攻 博士後期課程2年
戸室幸太郎
光栄なことに第25回日本RNA学会年会で青葉賞を受賞し、その副賞として海外渡航支援を頂きました。この支援をフル活用させていただき、2025年5月末にサンディエゴで開催されたRNA Society Annual Meeting 2025 (RNA2025)へ参加し、その後カリフォルニア工科大学 (Caltech)を訪れて研究セミナーを行いました。ここでは、国際学会とラボ訪問の様子をまとめ、これから国際会議や海外セミナーに臨む方々の参考になればと思いご報告いたします。
RNA Societyの年会は、年に一度世界中のRNA研究者が1000人規模で集まる国際会議で、2025年はカリフォルニア州サンディエゴが会場でした。初日にはプレカンファレンスのワークショップやキーノート講演があり、以降はプレナリーセッション、並行セッション、ポスターセッションやメンタリングディナーなどの多彩なプログラムが組まれています。朝から夜遅くまで連日びっしりと発表が続くものの、会場全体にオープンスペースでのコーヒーブレイクなども設けられており、心地よいリラックスした雰囲気でした。
年会では、構造解析や翻訳制御、RNA修飾、創薬など幅広い研究が発表され、世界中の研究者による最新の成果を聞くことができました。プログラム全体を眺めると、クラシカルな RNA生物学とRNA医薬が完全に地続きになっていることがよく分かります。RNAが「特殊な分子」から「当たり前に使われるプラットフォーム」へと変わりつつあることを実感でき、これからの研究の方向性やキャリアを考える上で大きな手がかりになりました。個人的には、分野を絞った小さめの会議の方が一人ひとりと腰を据えて議論できるという意味で好みではあるのですが、このような大規模年会に参加すると、分野地図とその上での自分の立ち位置がわかるというメリットがありました。
私は、口頭発表の機会をいただき、細胞内局所翻訳を調べる手法の開発と応用について 10分ほどのショートトークを行いました。発表後は、予想していた以上に多くの質問を頂きました。実験条件の細かい点から、自分が日頃ぼんやりと考えていることを言語化させられるような鋭い問いかけが多く、ありがたい限りでした。自分が論文中で用いた言語モデルの開発者とも直接話すことができたのも大きな学会ならではだと感じました。また会期中に、本研究のpreprintを公開することができたのですが、翌日にはさっそく「もう読んだよ!」「あの Figureについて聞きたい!」と声をかけてくださる方もおられました。投稿したばかりの成果に対してタイムリーなフィードバックをいただけたことで、新たな視点に気付くことができ、オープンサイエンスの価値を改めて実感しました。
国際学会に参加することの醍醐味は、発表そのもの以上に「人と話せること」だと思っています。今回特に印象深かったのは、将来のポスドク先として関心を持っていた海外ラボのPIの方々と直接時間をとってお話しできたことや、以前の学会で友達になった人たちと再会できた、といったことでした。また、新たな研究テーマとして考え中だったプロジェクトに必要な実験系を、直接お願いして提供いただけることになったのも大きな収穫でした。国際学会の場で「面白そうだね、じゃあ一緒にやってみよう」という会話がそのまま次の実験、キャリアにつながっていくので、研究は人との出会いで動くのだと改めて実感しました。現在は、その実験系を用いた新しい研究も動き始めており、今回の経験を今後の成果につなげていきたいと考えています。
学会中はサイエンスだけでなく、参加者同士の交流も深めました。ポスターの合間に知り合った人たちと一緒にLa Jollaの海岸で寝そべるアシカを間近に眺めたり、In‑N‑Out Burgerにはじめて行ったりと、地元の文化や自然にも触れることができました。こうした何気ない時間が、お互いの背景や研究への思いを共有する良い機会となり、ネットワークを深めるきっかけにもなりました。

写真 1 (左)La Jolla海岸のアシカたち 、(右上) Furqan Fazal Labの人たちと、(右下) In‑N‑Out Burgerのセット
RNA2025終了後は、ロサンゼルス近郊のパサデナにあるカリフォルニア工科大学(Caltech)を訪問し、研究セミナーを行いました。Caltechの周辺は大変治安も良く、緑豊かで落ち着いた雰囲気と最新の研究施設が共存していました。セミナーでは学会発表よりもたくさんの時間をいただけたため、より詳しい研究内容や今後の構想も紹介することができました。セミナーの後には、David Chan博士のラボやShu‑ou Shan博士のラボの方々と、ミトコンドリア外膜での局所翻訳の研究について意見交換をする機会もありました。お互いのアプローチや課題、今後の展望についてじっくり議論することができ、同じテーマに取り組む研究者から多くの刺激を受けました。
また、個人的な余談ですが、英語の勉強の一環として見ていたドラマ 『ビッグバン・セオリー (The Big Bang Theory)』の舞台がパサデナであることもあり、街歩きが楽しみの一つでした。ドラマに登場するCaltechをはじめ街の風景を実際に見ることができ、ファンとしては感慨深い体験となりました (近くにはドラマにちなんだThe Big Bang Theory Wayや、登場人物がアルバイトをしていたThe Cheesecake Factoryがあり実際に行くこともできます)。

写真 2 (左)Caltechの建物、(右)The Big Bang Theory Wayの看板
RNA2025への参加とCaltechでのセミナーを通じて、最先端のRNA研究の広がりと深さ、また海外の研究環境の魅力を肌で感じることができました。多様なバックグラウンドを持つ研究者から真摯な助言や励ましをいただけたことは、自身の視野を大きく広げるきっかけとなりました。青葉賞の副賞としてこのような貴重な機会を与えてくださった日本RNA学会および関係者の皆様に深く御礼申し上げます。さらに、日頃より研究を支えてくださっている岩崎さん、共同研究者の皆様、研究室の仲間に改めて感謝いたします。特に、一緒に学会に行ってくれた藤さんは、硬水に当たって終始死にそうな体調の中、私のわがままに沢山付き合っていただき、サンディエゴとロスの滞在を一層楽しいものにしてもらいました。本報告が、これから国際学会や海外研究室訪問にチャレンジする方々の一助となれば幸いです。今後も世界中の研究者と学び合い、得た刺激と人脈を地域の枠を越えた協力へと結びつけていけるよう、謙虚な気持ちで研鑽を積んでいきたいです。
P.S. Waymoの完全自動運転
学会やセミナーの合間に、ロス近郊で完全自動運転車Waymoのタクシーに乗車してみました。実際にハンドルも何も操作する人がいない車に乗ると多少の恐怖感がありましたが、走行は非常にスムーズでした。日本ではまだサービスが展開されていませんが、自動運転の社会実装が着実に広がっていることを実感しました。機会があればぜひ皆さんも体験してみてください:)



