渡辺公綱先生の思い出

横山 茂之

 渡辺公綱先生には言葉では言い尽くせぬほどお世話になっておりましたので、ご訃報に大変なショックを受けました。渡辺先生に最初にお会いしたのは、私が宮澤辰雄先生の研究室で大学院生だったときに、三菱化学生命科学研究所の大島泰郎先生の研究室でした。渡辺先生が書かれた高度好熱菌tRNAの2チオリボチミジンによる耐熱化機構の総説を読んで感激し、西村暹先生にご紹介いただいて、ドイツ留学から戻られたばかりのところに押しかけ、共同研究をしたいとお願いしました。それ以来、ずっとお付き合いいただくことになりました。

 渡辺先生は、高度好熱菌tRNAの次には、低温に生息するオキアミのtRNAから、ミトコンドリアのtRNAの変則的な構造と機能に進まれ、数々の独創的な研究を展開されて、RNA分野で知らない人はいない偉大な業績を打ち立てられました。渡辺先生の恩師であられる今堀和友先生、その研究室の後輩で私の恩師である宮澤辰雄先生の物理化学に基づく研究と、西村暹先生の生化学や生物学に基づく研究とを合わせた渡辺先生の研究スタイルは、現在までずっと、私にとっての目標です。国内外の学会や互いの研究室で渡辺先生にお会いしてお話しすることは、立体構造の視点に捕らわれがちな私にとって、いつも視野を大きく広げてくださる貴重な時間でした。渡辺先生は、たくさんの優れたお弟子さんを育てられ、皆さんがtRNA等の分野を牽引されていることは、渡辺先生の御指導とお人柄のためと思います。上田卓也先生、鈴木勉先生や、私の研究室に加わってくださった竹本(堀)千重さんなど、多くの方にお世話になっています。

 個人的なことですが、渡辺先生は私より12年と2日年上で、誕生日が近いこともあって、特にお慕いしておりました。研究室の秘書さん同士、仲が良かったこともあり、何回か、誕生日をいっしょにお祝いさせていただきました。生き方について悩んだときは、いつも渡辺先生をお訪ねして、渡辺先生の優しいお人柄に接して、お話ししているだけで、気持ちが回復して元気になりました。もっともっとエピソードを書こうと思ったのですが、思い出が怒濤のように頭の中を駆け巡り、涙が溢れてきて、書けなくなってしまいました。申し訳ございません。

 渡辺公綱先生のお導きに深く感謝申し上げるとともに、安らかなるご永眠を心よりお祈り申し上げます。

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